多くの日本企業にとって、中国語圏はグローバルマーケティングでの重要市場ではないでしょうか。中国でもインフルエンサーマーケティングは非常に盛んですが、海外SNSの制限や独自の商習慣などもあり、日本や欧米とは異なる文化が根づいています。
この記事では、中国におけるインフルエンサーマーケティングの概要を紹介するとともに、どのような形で中国語圏の消費者に向けてインフルエンサーマーケティングを実施できるか、ご紹介します。
目次
中国で流行するSNSと、インフルエンサーマーケティング
中国本土では、日本では一般的なSNSや動画共有サイトの閲覧制限がある一方で、中国独自のSNSが人気を集め、多くの消費者が利用しています。中国では主にインフルエンサーを含む、SNSで影響力を持つ存在のことをKOL(Key Opinion Leaderの略)と呼び、日本国内のインフルエンサーと同様に、多くのファンを抱えるようになっています。
中国の主なSNSとその特徴
KOLが活躍するSNSにはいったいどのようなものがあるのでしょうか。以下の表はKOLが活躍しているSNSプラットフォームに関するデータです。日本でも耳にしたことがあるようなものから、あまり馴染みがないものまでさまざまなことが分かるのではないでしょうか。
KOLがカバーしているファンの数は、Wechatでは8億人以上、Douyinでは6億人以上、Weiboでは4億人弱、Kuaishouでは3億円強、Bilibiliでも1.6億人と、SNSでのKOLの影響力の大きさは明らかです。
日本でもSNSごとにユーザー層や投稿される内容が異なることがありますが、中国のSNSでも同様に少しずつ住み分けがあります。WeiboやBilibili、REDは都市在住者のユーザーが多いとされ、一方で、Kuaishouは地方在住のユーザーが多いとされています。また、WechatやDouyinは地域のバランスはなく幅広く利用されている傾向にあります。
ここから、主要なSNSをもう少し詳しく紹介します。
Wechat(微信)
Wechatは、中国のテンセント社が運営するメッセンジャーアプリで、日本におけるLINEのような存在です。ほぼ全ての中国人がインストールするアプリで、電子マネーやショッピング機能なども備えた非常に多機能なアプリです。
LINEのように友だち同士でメッセージを送り合う「チャット」機能とタイムラインで投稿が表示される「モーメンツ」機能があり、Wechatではこのモーメンツ機能もよく使われています。
KOLは公式アカウントを開設し、アカウントを購読している消費者に向け、投稿によって情報を発信しています。インフルエンサーマーケティングの手法としては、公式アカウントから企業タイアップの投稿を行う形が中心となります。
以下のYouTube動画でもWechatについてわかりやすく紹介されていました。
Weibo(微博)
Weiboは、中国の新浪公司が運営するSNSです。ミニブログのような位置づけで、テキスト、画像、動画を投稿することができるため、中国版Twitterのようなイメージで語られます。また、日本の芸能人などが中国進出する際にWeiboをよく使うことから、日本でも知名度の高いSNSではないでしょうか。
機能的な特徴としては、Twitterのリツイートに該当する「転発」があり、投稿の拡散が見込めます。
後ほど紹介するREDに次いで女性ユーザーが多く、中でも10〜30代が多いです。一方で、そのユーザー層から、近年は過激派フェミニストが多く出現するという問題も抱えているようです。
Douyin(抖音)
Douyinは、中国のバイトダンス社が運営するショート動画プラットフォームです。日本や欧米では「TikTok」として広く使われているサービスの中国国内向けのアプリといえます。TikTokにも搭載されている動画投稿機能やライブ配信機能に加え、EC機能やライブコマース機能も搭載されており、TikTok以上に多様な機能を備えているといえます。
また、ユーザー層もTikTokのような若い女性中心という訳ではなく、幅広い層で利用されており、その結果として影響力の高いSNSとして人気を集めています。
Kuaishou(快手)
Kuaishouは、ショート動画プラットフォームです。上記のDouyinと機能的には似通っており、ショート動画やライブ配信ができるSNSです。特徴としては、一般人、特に35歳以上のユーザーによる、エフェクトやフィルターなどの効果を使わない自然な動画の投稿が中心です。そのため、バズる動画もインフルエンサーの投稿よりも一般人の投稿のほうが多いのがDouyinとの住み分けとなっているようです。
また、ライブコマースの機能が充実していることもあり、ライブコマースを得意とするKOLが多いのも特徴です。
Kuaishouについては以下のYouTube動画でわかりやすく解説されていました。
Bilibili
Bilibiliは動画共有サイトで、機能的にはYouTubeと近く、個人クリエイター中心に投稿が行われています。特徴としては、ユーザーの年齢層が低く、特に10代と男性比率の高いSNSです。また、サブカルチャー要素の強い動画が多く投稿されており、日本のアニメに関する動画なども人気のカテゴリーです。この点から、中国版ニコニコ動画とも表現されることも多いです。
他のSNS同様、通常の動画投稿に加えてライブ配信機能も搭載されています。日本のサブカルとも相性がよいことから、日本好きのユーザーが多いのも特徴の1つです。
RED(小紅書)
REDは写真や動画などを投稿できる、いわばInstagramのようなSNSです。元は化粧品の口コミアプリだったこともあり、女性ユーザーが多くを占めています。
EC機能が優れているのが特徴で、独立したEC機能が搭載されていることや、投稿から商品詳細ページへのリンクが記載できたりと、商品購入を促す機能が多く用意されています。
REDについては以下のYouTube動画でわかりやすく解説されていました。
先日、REDの日本向けアプリ「habU」も公開され、日本でもますます注目を集めるアプリになりそうです。
中国でインフルエンサーマーケティングが重要な理由
上記で紹介したように、KOLが影響を与える人の数は数億人に達するため、日本以上にインフルエンサーマーケティングのリーチが高いと言えます。実際、Mediakixの調査では、顧客や流入トラフィックの質が他のマーケティングチャネルよりも高いと「強く同意する」「同意する」人の割合は71%にのぼります。また、他のチャネルを比較したインフルエンサーマーケティングのROIが「とても良い」「良い」と回答した人は48%で、「同程度」も加えると実に89%にのぼります。
このデータからも、マーケティングチャネルとしてのインフルエンサーマーケティングの有用性を多くの企業が実感していることがわかります。
中国におけるインフルエンサーの種類
中国では、SNSで活躍するインフルエンサーのことをKOLと呼ぶことが一般的ですが、近年はその扱いが細分化されています。KOLに加え、似たような存在として「KOC」や「網紅(ワンホン)」と呼ばれる人々もいるので、その違いについて紹介します。
KOL
KOLとはKey Opinion Leaderの略で、SNS上で影響力のある人々を指します。いわゆるインフルエンサー全般を指しますが、テレビなどで活躍する芸能人はKOLには含まれないようです。
KOC
KOCはKey Opinion Consumerの略で、KOLよりもファンが少ない、どちらかと言うと「発言力のある一般人」のような存在です。日本で例えると、安価で起用できるキャスティングプラットフォームに登録されているナノインフルエンサーのような存在と言えます。
ワンホン(網紅)
ワンホンはKOLとほぼ同義で使われる言葉ですが、微妙なニュアンスの違いがあります。KOLの方がより専門的な知識を持ち、ある程度の期間をかけて人気を集めてきたような人々を指す一方で、ワンホンは純粋にSNSでの人気者のようなイメージで、文脈によっては一時の流行で人気が出たのみで人気が長続きしない人、のようなネガティブな表現で用いられることがあります。
インフルエンサーとKOLの違い
ここまで紹介してきたように、日本で使われるインフルエンサーと、中国語圏で使われるKOLという言葉の間では大きな意味の違いはありません。
ライブコマースとインフルエンサーマーケティング
日本でもたびたび話題になる、中国でのライブコマース。日本ではそこまで広まっていない印象ですが、中国では急激に人気を集めています。Statistiaのデータでは、2018年には1200億元程度だった市場規模が、コロナ禍を経て2021年には2.27兆元に達し、2023年には4.92兆元に達すると推測されています。
中国ではさまざまな人気ライブコマースアプリがありますが、上記で紹介した各SNSでもライブ配信機能とショッピング機能が揃っています。SNSで活躍するKOLがライブ配信で自ら商品の紹介と販売を行うことで大きな売上を上げるようになっており、その影響からか、日本ではあまり馴染みのない成果報酬型でのタイアップも多く行われています。
そのため、インフルエンサーマーケティングの実施方法として、よりアフィリエイトに近い形でインフルエンサーマーケティングを行い、ライブコマースをコンバージョンポイントとすることでより効果測定が容易にできるのではないでしょうか。
中国へのプロモーションのためのKOL起用
このように、中国語圏におけるプロモーションでは、主要なSNSを活用し、直接的な購買につなげるためのインフルエンサーマーケティング施策が非常に重要性を増しています。それでは、日本企業が中国でプロモーションを行うためにどのようなKOLを起用することができるのでしょうか。
中国のMCNへの依頼
中国本土で活躍する主要なKOLは、MCNと呼ばれるマネジメント会社に所属しています。MCNは日本で言うUUUMのようなインフルエンサー事務所に近く、KOLのマネジメントやクリエイティブの制作、営業活動などを行っています。
そのため、キャスティングを希望するKOLやプロモーションの目的が明確であれば、インフルエンサーマーケティングの代理店や、場合によっては直接MCNへ依頼することがよいでしょう。
中国で活躍する日本人インフルエンサーの起用
もう少しハードルの下がるやり方としては、中国で活躍する日本人インフルエンサーを起用し、日本ブランドを押し出してプロモーションを行う、というものです。
WeiboやBilibiliでは比較的、日本人や日本語話者のKOLがいるため、そういった方へのアプローチは比較的行いやすかったり、日本ブランドのプロモーションに積極的なKOLも一定数存在します。しかしながら、絶対数が多いわけではないため、商材によってはそもそも起用できる候補者が存在しない、という懸念もあります。
在日インフルエンサーの起用
最後の方法は、中国本土の消費者を狙わず、国内で一般的なSNSを使って中国語で発信できるインフルエンサーに依頼するというものです。日本国内でも中国語圏で人気のインフルエンサーがいますし、中国語で日本文化や日本のブランドに関する情報を発信しているインフルエンサーが少なからず存在します。美容・家電・旅行系を中心に、日本国内で活躍するインフルエンサーは100名以上存在すると言われています。
そういった方々を起用し、日本国内の中国語話者や近隣諸国の中国語話者へのプロモーションを行うことも選択肢の1つとしては考えられるのではないでしょうか。
まとめ
中国語圏、特に中国本土では日本や欧米とは異なるSNS文化が発展しています。ますます市場が拡大する中国語圏で商品・サービスのプロモーションを行う上では、インフルエンサー・KOLの起用と、日本とは異なりSNS内で購買に誘導する導線作りなどが重要になってきます。
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