こんにちは、THECOO マーケティング部の虻川です。マーケティング担当者は年末ぎりぎりまで忙しい方が多いかとは思いますが、ブラックフライデーやAmazonプライムデー、Qoo10メガ割などの大規模なイベントも終わり、2023年のプロモーションから頭を切り替えて2024年の取り組みについて本格的に考える時期になりました。

この1年、コロナ禍が落ち着いたことで、消費者行動はオフラインへの回帰が進み、一部の国を除いて海外との往来もおおむね正常化しました。一方で、円安や物価高など、消費者としては経済的な負担を感じた年でもあります。

SNSの動向では、Metaが新たなSNSとしてThreadsをリリース、YouTubeではShortsでのクリエイター向けの広告収益分配の本格化、TikTokはTikTok liteのリリース、TwitterはXへの名称変更やAPIの有料化など、多くのニュースを耳にしました。また、新たなプラットフォームとして「盛らないSNS」のBeRealが流行し、10月からステマ規制がはじまるなど、SNSマーケティング・インフルエンサーマーケティングに携わる身としては大きな変化に対応し続ける必要があった1年となりました。

2023年のインフルエンサーマーケティングを振り返りながら、THECOOが考える2024年のインフルエンサーマーケティングの展望について紹介します。

目次

 

2023年のインフルエンサーマーケティング総括

まずはじめに、今年の年初に公開した2023年のインフルエンサーマーケティングトレンドの記事では、以下のようなトレンドを紹介していました。

  1. インフルエンサーの起用方針の多様化
    • クロスプラットフォームキャンペーンの増加
    • 「嘘のない」コンテンツの重要性
    • 長期間のパートナーシップへ
  2. キャンペーン手法の変化
    • デジタル広告の獲得コスト上昇の影響
    • オーガニックターゲティング
    • 新チャネルとしてのリテールメディア
    • リーチ獲得のための広告での二次利用
    • 「ファネルの全て」をカバーするキャンペーン
  3. インフルエンサー自身の変化
    • プラットフォームからの収益依存の脱却
    • インフルエンサーの収益源の多様化

上記のトレンドの中でこの1年で体感したものは、複数のSNSを活用したマルチプラットフォームでのインフルエンサーマーケティングを実施する企業の増加です。Z世代向けであるかを問わず、さまざまな商材でTikTokでのインフルエンサーマーケティングが増えましたし、キャンペーンの組み合わせという観点ではYouTubeの長尺動画のタイアップとともに、InstagramのリールやYouTubeのショート動画など、複数のSNSプラットフォーム、複数のクリエイティブの投稿を行う企業が増えました。

また、インフルエンサーマーケティングの取り組みが進む業界では、インフルエンサーとの長期契約が増えており、業界内の競合企業間でインフルエンサーの長期契約と競合排除を通じたつながりを深めることが増えています。散発的な投稿を繰り返すのではなく、1人のインフルエンサーからの発信を増やすことで、認知や短期的なコンバージョンだけでなく、権威性を通じたブランディングや態度変容を目指す取り組みが増えているように感じます。

そして、タイアップ投稿素材の二次利用も一般的になってきました。特にショート動画はタイアップ投稿で作られたクリエイティブそのものが短い尺でもインパクトを与える内容で強い訴求力を持つため、デジタル広告への転用や、ブランドのSNSアカウントやLPなどでも成果が出やすいものが増えてきています。また、SNS広告はMetaやTikTokが第三者配信の設定をより簡単に行える改良を進めており、インフルエンサーのアカウントを用いた広告の第三者配信を目にする機会が増えました。

インフルエンサーマーケティングの市場全体としては、コロナ禍の2020〜2022年ほどの伸びを感じたわけではありませんでしたが、それでも市場の拡大は続いていると感じました。特にコロナ禍で影響を受けていた業種、実店舗系の業態やトラベル系の業界ではインフルエンサーマーケティングに取り組む企業が増え、これまではインフルエンサーの自発的な投稿で偶発的な反響があった企業の間でも、予算をかけてSNSで積極的にプロモーションをはじめるという姿を目にしました。

避けては通れないステマ規制

手法としてのインフルエンサーマーケティングの変化に加え、大きな変化となったのは「ステマ規制」の施行ではないでしょうか。以前から各SNSでのルールや業界団体などの自主的なガイドラインはあり、ほとんどの企業がステマにならないような対応を進めていましたが、2023年の10月からは法的な罰則を伴う形でステマとならない投稿を行う必要性が広告主側に課されることになりました。

炎上やブランド価値毀損のリスクだけでなく、法令遵守の観点でも、消費者に対して正しくインフルエンサーと広告主の関係性を明示し、クリーンなマーケティングを行うことが求められます。

もっと知りたい

ステマ規制とその対応策については以下の資料もご覧ください。

【資料】ステマ規制目前!インフルエンサーマーケティングに照らし合わせたポイントと対応策

2024年のインフルエンサーマーケティングトレンド

このように、インフルエンサーマーケティングを巡るトレンドは2023年も変化してきましたが、2024年も引き続き変化が生まれる1年になるのではと考えています。THECOOが考えるトレンドをいくつか紹介します。

1. AI活用の進展

AIがインフルエンサーマーケティングに関わる業務にどのような影響を与えるのかを確実に推測することは難しいですが、より多くのインフルエンサーや企業側のマーケターがAIを利用するようになることは間違いないでしょう。AIの活用が進む領域は、クリエイティブ制作とパフォーマンス分析の2つだと考えられます。

クリエイティブ制作では、2023年に一気に活用が広まった生成AIがより浸透することが考えられます。これによってキャプションの作成や写真・動画の編集などで恩恵を受けるでしょう。

パフォーマンス分析においては、コメントやいいねなどのエンゲージメント情報やアカウントのインサイトを分析し、インフルエンサーやブランドがフォロワーの好みを把握するのに役立ちます。さらに踏み込んで、どんなコンテンツを投稿すればより多くの反応が得られるかをサジェストするようなことも実現できるようになってきました。

AIにより生産性が高まることは予想されますが、インフルエンサー自身も企業のマーケターも、AIへの過度な依存には注意が必要です。AIツールは作業を効率化するには最適ですが、使いすぎると投稿内容が表面的・人工的であるように感じられるため、ファンとのリアルなつながりが失われる危険性があります。また、インフルエンサーが投稿のアイデアをAIに依存しすぎることで、ファンがインフルエンサーの情報の中で大切にしていることや共感していることと乖離してしまうリスクもあります。

さらに、クリエイティブをAIに頼りすぎると、発信される情報の信頼性や倫理的な観点での問題も発生しかねないため、注意が必要です。

2. インフルエンサー主体のデジタル広告

情報が溢れるこの時代において、消費者の心に残るコンテンツを制作することは非常に難しくなっています。過去には誰もがずっと覚えているようなテレビCMが生まれることもありましたが、多くのブランドが既存の広告はかつてのようなインパクトをもたらせないと感じています。

CreatorIQの2024 Influencer Marketing Trend Reportによると、66%のブランドが、インフルエンサーを起用したコンテンツが従来のデジタル広告と比較して、より高い費用対効果をもたらすと回答しています。このデータから、今日の消費者が、クオリティは高いものの一方的な広告よりも、信頼感、親近感のあるコンテンツを重視していることを示しています。

インフルエンサーによるコンテンツが既存の広告クリエイティブを凌駕していることは決して驚くべきことではありませんが、一方で、この1年で40%のブランドが全体の広告費用を前年比で増やしていることが明らかになっています。一方で、インフルエンサーコンテンツに関するコンテンツの制作費用はほぼ均衡しており、55%のブランドが前年と横ばいであると回答しています。この傾向から、より高い費用対効果が見込めるものに投資することで競合に差をつけることができると言えるでしょう。

3. ブランド認知の重要性

伝統的に、コンバージョン率はマーケティングキャンペーンの効果を評価するための絶対的な基準でした。しかし最近では、ROIの算出にブランドがより総合的なアプローチをとるようになっており、具体的には、ブランドはコンバージョン指標から、より広範なブランド認知の目的に軸足を移すようになっています。

ある調査では、インフルエンサーマーケティング施策の最も重要な目標として「コンバージョン」よりも「ブランド認知」と回答した割合が3倍高くなりました。

この変化は、長期的なエンゲージメントとブランドレピュテーションの醸成が、より持続的で本質的な成長と、結果的にはより多くのコンバージョンにつながるという、業界全体の認識を示しています。しかしながら、どのように認知度を定量的に評価するかという課題は依然として残っており、この曖昧な指標をどのように測定し、評価するかについては今後もより工夫が必要になる領域です。

4. 洗練よりも本音ベースのコンテンツを重視

昨今、ブランド企業は広告に対する冷ややかな目や不信感の高まりを目の当たりにしています。デジタルに慣れ親しんだ消費者は、SNSやデジタル上での不自然な宣伝を見抜くようになってきました。インフルエンサーが発信する情報も、普段からファンとして投稿を目にしている消費者にとっては、タイアップ投稿であったとしても、普段の投稿との一貫性があるか、本音ベースで商品やサービスの紹介をしているか、ステマ規制をかいくぐるような怪しさがないかなどを気にするようになっています。

タイアップ投稿であっても、本音ベースのコンテンツはインフルエンサーとファンの間のより深いつながりを生み、インフルエンサーが信頼を得るのにも役立ちます。優れたブランドとのタイアップはインフルエンサーのファンにとっても喜ばしいものです。

通常投稿に加え、1つひとつのタイアップ投稿の内容を通じて信頼が生まれていれば、結果的には個別のタイアップ投稿のエンゲージメントが高まり、ブランドにとってもインフルエンサーにとってもタイアップを行うメリットとなります。

5. 60秒以内のショート動画に力を込める

YouTube ShortsやInstagramのリール、TikTokなど、多くのSNSで視聴されるショート動画はますます多くの視聴者の関心を集めています。2024年もこの勢いは変わることはないと予想されますが、ブランド企業がこのトレンドに対応するためには、より短い動画フォーマットに合わせた簡潔でインパクトのあるコンテンツを作成しなければなりません。

Statistaのデータによると、TikTokでフォロワーを多く抱える大規模なアカウントの平均視聴時間はわずか42秒です。有償のインフルエンサーとのタイアップでは多くの情報を盛り込み態度変容を促せるようにしようと意気込んでしまいますが、ことショート動画においてはその努力が無駄になってしまう可能性があります。それでは、60秒以内で説得力のあるストーリーを伝えるにはどうすればよいのでしょうか。

強力なフックから始める

視聴者の注意を引くには、動画の最初の数秒が重要です。説得力のある質問や投げかけ、驚くべき事実、面白いエピソードなど、強力なフックから始めましょう。

メッセージは1つに絞る

60秒以内で商品やサービスの魅力を伝えきることは難しく、情報を詰め込みすぎないようにしましょう。コンバージョンなどの直接的な行動を目的とするのではなく、視聴者に伝えたいメッセージを1つに絞り、記憶に残すことを心がけましょう。

視覚的なインパクトを残す

ショート動画でしっかりとストーリーを伝えるには視覚的なインパクトが不可欠です。視聴者の注目を集め、伝えたいストーリーをより魅力的にするためには、動画や画像の画質やクオリティにも気を使いましょう。

動きを与え続ける

ショート動画はテンポが命です。細かくカットを切り替えるなど、動画を動かし続け、不要な間延びを避けましょう。

行動喚起で終わらせる

動画を見た後、視聴者に何をしてほしいかを伝えましょう。SNSアカウントをフォロー・友だち追加してほしいのか、投稿をいいね・共有してほしいのか、購入してほしいのかなど、動画の最後にとってほしい行動を必ず伝えましょう。

2024年のSNSプラットフォームのトレンド

ここまで、マーケティング手法としてのインフルエンサーマーケティングのトレンドを紹介してきましたが、SNSプラットフォームもアクティブな交流を増やし、SNSを盛り上げるための機能追加を行ってきました。

この1年は、どのプラットフォームもクリエイター・インフルエンサーの活躍を支援できるような機能を追加し、その結果としてユーザーがより長くSNSを利用できるようにする、という方向性が明確に見えました。

THECOOでは1年間を通してマンスリーレポートを公開し、その中で主要なSNSに関するニュースや新機能を紹介してきました。この記事でも2023年のSNSプラットフォームのトレンドをおさらいし、2024年の方向について考えてみます。過去のマンスリーレポートを読みたい方は以下のリンクからご覧ください。

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YouTube:クリエイターの経済的サポートの強化とAI分野の開発

YouTubeはここ数年は縦型動画のShortsを中心として機能追加を進めており、UIやUXもShortsの視聴をより促すように変更が加えられています。それを通じて、クリエイターがさらに活躍できるような支援が進んでいます。

大きなニュースは、2023年2月から広告収益の分配の開始です。これによって、以前から活躍するインフルエンサーによるShortsへの投稿が一気に増えました。その一方で、2023年8月以降、スパム対策の一環としてShortsのキャプションではテキストリンクが動作しないようになり、インフルエンサーマーケティング施策における直接的な行動の促進が難しくなりました。

Shortsだけでなく、通常動画に役立つ機能も開発・追加が進んでいます。直近ではテスト中の機能としてAIの採用が触れらており、具体的には「AIによるサマリーコメント機能」や「AIにおすすめの動画を質問する機能」が紹介されています。それ以外にも、クリエイターがマネタイズを行う機能として、動画内で商品を紹介した時間のタイムスタンプを追加する機能や、連携するECサイトへのアフィリエイトリンクの設置なども順次搭載されるようになっていくようです。

10月の大きな機能追加でも、音声認識によりチャンネル登録を勧める際のチャンネル登録ボタンを目立たせるエフェクトの追加や、概要欄での他SNSのリンクの表示改善など、よりクリエイターが活躍する機能が増えています。

Instagram:インフルエンサーとファンのつながりを強化

Metaの話題はThreadsのローンチが中心でしたが、InstagramとThreadsの連携だけでなく、Instagram単独でもさまざまな機能が追加された1年でした。リールの編集機能の強化や、日本国内でも有料のMeta認証の提供が開始されるなどのニュースもあり、より権威性や信頼度を高めるための機能が増えましたが、インフルエンサーがファンとのつながりを強めるための機能も増えました。

インフルエンサーとファンのつながりを強化する機能として「一斉配信チャンネル」の提供が挙げられます。これによって、フィードやリールに加え、クローズなエリアでファンとの交流がはかれるようになりました。また、プロフィールに複数のリンクを貼れるようになったことで、いわゆる「Link in Bio」系のサービスを使うことなくインフルエンサーのさまざまな発信や情報にアクセスしやすくなりました。

TikTok:普遍的な動画プラットフォームへ

TikTokは強力なレコメンド機能と、縦型のショート動画を中心としたモバイル体験によって新たなSNSとして人気を集めてきましたが、2023年はより普遍的な動画プラットフォームへの進化がみえる1年となりました。

YouTubeには有料のメンバーシップ機能が用意されていますが、TikTokでも「Series」という機能が追加され、自身の投稿を有料のプレミアムコンテンツとして公開できるようになりました。これによって、クリエイターがTikTokを通じて収益を得る方法が増えたことになり、ファンがクリエイターを応援する「クリエイターエコノミー」の創造をさらに後押しできるようになりました。

また、12月にはタブレット端末など、より大きな画面の端末での視聴機能を改良しました。これまでから投稿できる動画の尺を伸ばす機能改良が行われていましたが、大きな画面での視聴にも対応することで、例えば料理動画やスポーツ動画など、大画面で見るニーズがあるジャンルの動画も見やすくなりました。

こういった機能の搭載によって、より普遍的な動画SNSとしての立ち位置を確立するとともに、インフルエンサーなどのクリエイティビティをさらにいかすプラットフォームとして成長させていく意図が見えます。

X(旧Twitter):信頼性の高い空間へ

XのCEO、Linda Yaccarinoが10月に投稿したブログで、この1年でXが成し遂げてきたことを紹介しています。これまでは、不特定多数のユーザーによるテキスト中心のコミュニケーションで爆発的な拡散力をもたらすプラットフォームとして進化を続けてきましたが、認証済みアカウントの有料化やAPIのライセンス形態の変更など、より信頼性の高いアカウントによる信頼性の高い情報に重きを置く方向に進んでいるように感じられます。

インフルエンサーに関するアップデートとしては、クリエイタープログラムの創設によって広告収益が分配されるようになり、投稿を通じた安定的な収益を得られるようになりました。その他にも、コミュニティ機能が追加され特定のトピックについて発信することができるようになり、共通の興味関心を持つユーザーとのつながりを深められるようになりました。

また、今後のロードマップとして、スペースで動画を配信できる機能が2024年早々に追加されるというアナウンスがありました。2023年夏にライブ配信機能が追加されていましたが、複数人で動画の配信が行えるようになることで、InstagramやTikTokのようなコラボ配信を行えるようになります。より信頼性の高い情報を得られ、多様なコンテンツが発信されるプラットフォームへと進化していく可能性を感じます。

2024年のインフルエンサーマーケティングの展望まとめ

縦型ショート動画の流行もあり、2023年のインフルエンサーマーケティングはクリエイティブやSNSの選択肢が増えた1年でした。また、インフルエンサー側も投稿の二次利用へのハードルが下がってきたことで、インフルエンサーマーケティングとしての施策の幅が広がったように感じます。

2024年は、インフルエンサーマーケティングにおいてもAIの波がさらに強く押し寄せる1年になると感じています。クリエイティブ制作フロー、SNSプラットフォーム、そして効果測定に至るまで、AIのメリットを実感する1年になるでしょう。

また、インフルエンサーマーケティングの目的がさらに広がり、旧来から重視されていたリッチなコンテンツによる態度変容に加え、ショート動画による純粋なブランド認知や商材認知、広告パフォーマンス向上のためのインフルエンサーの素材利用など、よりインフルエンサーマーケティングが担う役割が高まると感じています。

とはいえ、マーケティング施策を通じて何をどう伝え、消費者の欲しい気持ちを高め、ファンを増やしていくかは変わらないものだと思います。マーケターもインフルエンサーに負けないようなクリエイティビティを発揮し、SNS時代の消費者の心に響くプロモーションを行っていきましょう。

THECOOは1社でも多く、マーケティングを通じた企業の成長に携わることができればと思っています。2024年もTHECOOをよろしくお願いします。

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