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ショートドラマは何故Z世代に受けるのか?共感とリアルで心を掴む、新たな広告の形
INDEX
ショートドラマとは
ショートドラマとは、数分で完結するドラマ仕立ての動画を指します。中には販売促進を目的として商品を自然に組み込むことで、短時間の広告として機能するものもあります。Instagramのreel、TikTok、YouTubeショートといった、スマートフォンでの視聴を前提に制作された縦型動画は、“広告っぽさ”がないのが最大の魅力です。ショートドラマを使った広告が増える今、なぜショートドラマが広告の一部として高く評価されているのでしょうか。本記事では、ショートドラマとは何か、その提供価値について、Z世代の視点でわかりやすく解説します。
ショートドラマの内容
ショートドラマは、2~3分程度で完結する1話構成のドラマ仕立ての動画です。販売促進を主目的とする動画ではなく、物語の中に商品が自然に「映り込む」プロダクトプレイスメント形式が特徴で、視聴者に「広告である」という嫌悪感を抱かせずに商品紹介を行えます 。
また、ドラマ形式で商品使用シーンを描くことで、視聴者に具体的な使用イメージを提供することができます。単なる商品紹介動画では得られない、「困りごと」と「商品」が結び付きやすい構成で、ドラマへの共感を通じて商品理解や“使ってみたい”という感情を自然に作り出します。
若者の変化とショートドラマ
Z世代における「長時間」の集中力低下
Z世代は物心ついた時からSNSが身近な存在であることに加えて、YoutubeやTikTokの普及から、短時間の動画を見る回数は極端に増えたことが予想されます。そこで、誰でも見ることができる長尺動画の代表をドラマと仮定し、ドラマを見る人の割合の異動からZ世代と長尺動画との関係を考えます。以下の表は、10代から60代の方で、1年間に平均何作品のドラマを見たかについての回答の表です。

【出典】:LINEリサーチ”ドラマ視聴「月に1作品以上」は約6割!年代別の人気ジャンルとは?”https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001160.000129774.html (2025.7.10引用)
この表では、「月に5作品以上」のドラマを見る60代が33%であるのに対し、10代は5%であることが分かります。また、10代で1年間ドラマを全く見ていない人の割合は35%であるため、全体の3分の1がドラマを見る習慣がないと言えます。この結果から、長尺動画を見続ける人が減っていることが分かります。その理由として、短尺動画を沢山見る人の方が増えたためであるということが考えられます。短尺動画の代表格であるTikTokやInstagramのReels、YouTube Shortsは、一つの動画を短時間で見終える“達成感”を無意識に与え、その効果によってつい見続けてしまうものです。「ショートビデオ依存症」という言葉があるほど、非常に依存性の高いコンテンツになっています。短尺動画を見続けることで、視聴者はドラマなどの長尺動画への耐久性がなくなり、上記のような結果になった可能性が高いです。
これは、ドラマやYouTubeの切り抜き動画が高い視聴回数を得ている現象からも言えることでしょう。ドラマを見る若者が減っている一方で、ドラマの切り抜きを行っている短尺動画には安定して一定の視聴回数があります。この状況を考えると、本来1本1時間のドラマであっても、10分程度に編集されていれば、比較的短時間の動画として若者の興味を引きやすく、ヒットしやすいと考えられます。
私もドラマの切り抜きをよく見ます。『1時間ドラマを最初から見よう』と思うのと、『切り抜きを続けていたらいつの間にか1時間経っていた』とでは、心の構えがまったく異なるように感じます。前者は“視聴のために時間を作る”必要がありますが、後者は『いつでも辞められる』という心理的余裕があるため、気軽に見始めやすく、そして気付いたら長時間視聴していたという体験につながります。

出典:kamui tracker .”今さら聞けない!ショート動画の基本と市場動向【2023年版】”https://kamuitracker.com/blog/archives/17635 .(2025.7.10引用)
表からはショートドラマの動画投稿本数が2021年から2023年の間で飛躍的に伸びていることがわかります。この伸び方は需要の拡大によるものであり、今後もっと伸びていくことが予想できます。
また、若者の動画視聴の方法として「倍速」が挙げられます。
学校の授業でもオンライン授業がありますが、オンライン授業は倍速ができます。実際に倍速で授業を聞いている学生は多く、以下の近畿大学の調査でも実証されています。
【出典】朝日新聞:”「1.3倍速」で授業をする教員も 広がる倍速視聴、成績への影響は” https://www.asahi.com/articles/ASR163HBVQDXUTIL031.html?utm_source=chatgpt.com. (2025.7.10引用)
このように授業を倍速で見る人が多くいることから、Z世代は倍速で動画を見ることが当たり前となっていることがわかります。どんな動画でも2倍にすることで沢山の動画を見ることが出来る上、成績が落ちたり、内容が分からなかったりはしないため、タイムパフォーマンスを重視するZ世代は倍速をすることにポジティブな感情を抱いているのです。Youtube、TikTokも画面の端の長押しで倍速ができるようになったことから、倍速にするための手間が以前より減り、今までよりも倍速がしやすくなったことで、倍速の習慣化は広がっていると考えられます。
縦型動画の広がり
ショート動画の特徴である「縦型」動画ですが、ショートドラマだけではなくMV、ライブ映像、映画の広告など様々な種類があります。特にミュージックビデオは、本来の横型に加えて縦型のものも投稿されることが増えています。
・マルシィ「君中心に揺れる世界は」
・Mrs. GREEN APPLE「break fast」
この変化からは、テレビやYoutubeで見るものであったミュージックビデオは縦型で見ることが増えてきていると考えられます。縦型の動画では Instagram、TikTok、Youtubeショート、横型のままではテレビ、Youtubeと幅広いSNSの媒体で動画をあげることで、投稿者としても閲覧数の増加が見込めます。縦型のミュージックビデオの制作は全体の視聴回数をあげるために有効な手段なのです。このようにミュージックビデオまで参入している縦型動画は、ジャンルの偏りがなく、エンタメ全体に共通する潮流があると言えるでしょう。ミュージックビデオに限らず、ショートドラマや切り抜き動画も自然にその波に乗っているのです。
私はショート動画に対し、縦型のTikTokやInstagramのreelは簡潔な動画というイメージがあります。ミュージックビデオもライブ映像もサビだけであったり、始まりの一部分だけ公開されていたりするものが多いので、触りだけ知りたい、という時の概要の情報収集にぴったりなSNSであるという印象です。
ショートドラマが支持される理由
急速な内容展開
ショートドラマが高い再生回数を誇る理由として、展開の速さが挙げられます。
例として、次の「ごっこ倶楽部」の投稿を挙げます。
「いらっしゃいませ」「何名様ですか?」
この店員として当たり前の声がけに対して、動画での3言目は
「え、こわ」。
序盤で目を引くような言い方をすることで、自然と目が止まる映像です。
また、席に案内をしようとする店員に対し「あの席で良いですか?」と指定、注文に提案をした店員を否定したり、料理の提供が遅いと催促をしたり、長尺のドラマでの見所と言われるような印象に残る部分だけを取り上げた動画となっています。
このような間をあけずに場面の展開を繰り広げる点がショートドラマの最も大きな特徴と言えます。間を空けずに場面展開が行われることは、自然と視聴者の興味を誘い、隙を与えないことで、スクロールさせずに視聴回数を上げられます。
誰もが「経験あり」な題材
「ショートドラマ」の特徴として、記載の通り、「始まり方」に特有の工夫が施されています。さらに、視聴者の共感を得やすい身近なテーマを扱うことが多い点も大きな魅力です。具体的には以下のような題材が頻出しています。
・学園系
・恋愛系
・家族関係
これらはいずれも、多くの人が一度は経験したことのある瞬間や状況です。特に片思いや失恋・カップルの喧嘩と言った、感情が揺さぶられるエピソードが多く含まれます。
日本でのショートドラマの事例
日本ではどのようなショートドラマが流行っているのか、紹介するとともに、実際はどのような方法で販売促進を行っているのかについて紹介します。
- 日テレ×株式会社GOKKO(ごっこ倶楽部)
「毎日はにかむ僕たちは」
高校生の恋愛ショートドラマに見せかけて、ニキビ治療のPRを行う作品です。高校生の恋愛を題材とすることで高校生の閲覧を増加させ、中高生で悩んでいる人が多いであろうニキビ治療についての広告を織り交ぜています。同じ年代の中で興味・関心が高い要素を何種類も混ぜてあるため、興味を引き、広告であっても「見てしまう」内容になっています。
- コクヨcampusのPR
人気インフルエンサー おさき×植村颯太

出典:PRTIMES【コクヨ株式会社】”新学期のコミュニケーションのきっかけ作りを応援!ショートドラマ「放課後Campus!」を公開”(2025.7.17引用)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001034.000048998.html
代表的な文房具メーカーであるcampusもインフルエンサーを採用してPRを行っています。
高校生の恋愛をテーマにしつつ、人気インフルエンサーを起用して同年代の視線を引きつけています。
また、高校生にとって身近で使用頻度が高い文房具を自然な形でショートドラマ内に登場させることで、“広告感”を抑えながらも商品の魅力を伝える構成となっています。
このように、ターゲット層と一致する年齢設定・登場人物・使用アイテムを掛け合わせることで、視聴者に対してストレートに訴求できる広告効果が狙えます。
- JAL
大学生にありがちな考え方のズレと、その共感性を引き出しつつ、島の美しい映像で視聴者に「行きたい!」と思わせる演出をしています。大学生をショートドラマの登場人物とすることで、同年代の旅行者が「あるある」と共感しやすく、撮影地の美しさも自然と伝わります。
まとめ
ショートドラマ形式の広告では、「誰に何を売りたいか」を徹底的に考え、ターゲットの心に響くような状況設定やストーリー展開が不可欠です。
これは、ただ商品をアピールする従来の広告よりも、ずっと難しい作業です。なぜなら、視聴者の共感を呼び、心を掴むためには、ターゲット層の年齢や興味に合わせた人物設定や会話の進め方が非常に重要になるからです。
しかし、この緻密な設定が成功し、視聴者が「自分ごと」としてストーリーに入り込めたら、その効果は絶大です。従来の広告よりも、実際に商品を購入してくれる可能性の高い人たちに、より広く深くメッセージが届くと期待できるでしょう。
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・株式会社グローバルインフォメーション:”短編ドラマプラットフォーム市場:フォーマット、ジャンル、プラットフォームタイプ、収益化モデル別-2025-2030年世界予測”
・日本テレビ放送網株式会社”株式会社GOKKOと資本業務提携
~Z世代向けメディアミックスコンテンツ創出を加速するため縦型ショートドラマ領域を強化~”https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/20240712.html(2025.7.3閲覧)
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