インフルエンサーマーケティングの需要は年々増加し、2020年には332億円だった市場規模が、2027年には4倍以上となる1,302億円に達すると予測している調査もあります。マーケティング手法の1つとして急速に普及しているインフルエンサーマーケティングですが、実施すれば成果が出た時代は終わり、最近は上手く機能していない施策も散見されるようになりました。そこで今回は、インフルエンサーマーケティング、特にYouTuberとのタイアップ動画において、良い成果を生んでいる施策の共通点をご紹介します。

目次

インフルエンサーマーケティングの成果

インフルエンサーマーケティング、特にタイアップ投稿における成果と聞くと、一般的に何をイメージされるでしょうか。最も多く使われるのは再生数やいいねなどの高評価の数です。これはプラットフォーム上で特に準備の必要なく計測できるもので、非常にわかりやすく、比較もしやすいです。

しかしながら、その再生数やいいね数は、商材の訴求に直結するものでしょうか?それらはもしかするとインフルエンサーが話している姿を見たいだけの「再生」やインフルエンサーに向けての「いいね」かもしれません。

もちろん、再生やいいねという形で視聴者に反応してもらえることは非常に大切ですが、マーケティング担当者としては「購入」やその前段階の「サイト訪問」や「リンククリック」などの、より購買に近い、能動的な行動につなげたいのではないでしょうか。

実際、THECOOが調査したデータでも、SNSで興味を持って購入・利用の経験がある人の多くが情報に触れた後に「記載されているリンクをクリックした」「検索エンジンで検索した」と回答しており、やはり具体的な行動をしていることが伺えます。そのため、リンククリックの数を測定したり、リスティング広告などと組み合わせて特定のキーワードでの流入の増加を計測する、といった仕掛けを作り、成果を測ることが求められているのかもしれません。

インフルエンサーマーケティングの「良い施策」とは

とはいえ、常に上記のような指標が計測できればいいのですが、現実的には社内事情でそこまで大がかりな計測の準備が難しかったり、予算が小さいとノイズの範囲を超えた大人数の行動を促せなかったりする施策もあります。それでは、YouTube上だけで見出せる、YouTuberとのタイアップ動画における「良い施策」とは一体どういったものでしょうか?

THECOOがこれまで実施してきた施策の中で良い成果が出た施策の傾向に、投稿動画のコメント欄で商材を起点に視聴者とYouTuber、もしくは視聴者同士でのコミュニケーションが発生する、というものがあります。

消費者がSNSを介して行動する場合、情報を見てすぐに行動するのではなく「時間がある時」や「ふと思い出した時」に行動することの方が多い、という調査結果があります。

そのため、「○○ちゃんのこの動画を見て購入しました!」といった購入報告はもちろん、「こういう時に使ってみようかな」「この機能が気になる」といった興味を持った点の共有や「Amazonで品切れだったんですが、他ではどこで買えますか?」「身長150cmだと、Mサイズは大きいですか?」など、商品を紹介したYouTuberですらそこまで知らなかったり答えられなかったりする、問い合わせのようなコメントまで数多く寄せられています。そして、そういった質問にYouTuber自身だけでなく、別の視聴者が回答する様子もよく見られる光景です。

これは、視聴者やファンにとってインフルエンサーの存在が、ある意味でブランドよりも身近で信頼のおける存在であることの表れです。そのため、視聴者が商材にしっかりと関心を寄せ、その行動に影響を与えている良い施策では、このようなコミュニケーションが自然にコメント欄などで発生しているのです。

良い成果を生む施策の共通点

良い成果に繋がった施策の事象としては、能動的なコミュニケーションが生まれたということはご理解いただけたかと思いますが、良い成果を生んだ「施策としての共通点」には一体どういったものがあるのでしょうか。

要因はもちろん1つには集約できずさまざまですが、重要なものに【動画の主語が誰になっているか】というものがあります。

インフルエンサーは単なる商品の【露出場所】【メディア】ではなく、【人】です。さらに言えば、ただの人ではなく、限りなく消費者サイドに近い存在です。そのため、視聴者やファンは、その商品・サービスがいかに優れているかをブランド目線から発信する広告に対し、消費者代表として率直な感想を伝えてくれるところに信頼を置いています。

それにも関わらず、「この商品は、ここがすごい」「この商品の機能は、これです」のように商品を主語にしてPRしている投稿は、発信者がたとえインフルエンサーであっても良い成果を生みません。むしろ視聴者から、「企業に”言わされている”」と嫌悪感を抱かれることも少なくありません。

対照的に、インフルエンサー自身を主語にして「私はこの商品をこう使います」「私はここがいいと思った」とPRしている投稿は良い成果を生む傾向にあります。視聴者やファンはインフルエンサーの価値観、生き方、人柄、世界観に共感した結果、信頼しているので、インフルエンサーがその商品をどう使っているのか、どう楽しんでいるのか、なぜ使っているのか、といったエモーショナルな部分も含めて、同じ消費者としてインフルエンサーの発する言葉に説得されるのです。

企業・ブランドが成果を出すために意識すべきこと

ここまで見てきたように、効果的なインフルエンサーマーケティングを行うためにはインフルエンサーをひとりの【人】として考えることが重要です。特にインフルエンサーマーケティングが一般化した今日では「この企画ならバズる」「この人を起用すれば再生数が伸びる」など、そんな単純なものではないことはもはや明白でしょう。そういう意味では、再生数やいいね数でさえ、結果の一側面でしかありません。

企業のプロモーション担当者は、中長期的には行動を正しく計測できるように社内で基盤を整えていくことが求められつつ、本質的な成果のためにはインフルエンサーの発信する情報に興味を持ち、インフルエンサーの力を最大限に生かすという意識がとても重要になってきます。

具体的には、ファンの数や再生数など定量的に捕捉できる情報に加え、自社の商材の使い方・楽しみ方を伝えるのに適しているインフルエンサーは誰なのか、依頼内容はインフルエンサーの個性や魅力を消してしまっていないか、商材が魅力的に映る企画をともに考えられているか、などを考慮します。また、投稿してもらう内容を通して消費者やファンにどういう気持ちになってほしいかを突き詰めていくことも非常に大切な心がけです。

商材自体や売り方を誰よりもよく知るブランド担当者と、消費者の代表として情報を発信するインフルエンサー、それぞれの立場・特性を理解することがインフルエンサーマーケティング成功への第一歩と言えるでしょう。