インフルエンサーマーケティングを始めるにあたり、誰もが気になる炎上回避策。なかでも気になるのが、「消費者(SNSユーザー)からステルスマーケティングだとみなされないために、何に気をつければ良いのか?」という点ではないでしょうか。

そこで今回は、THECOO主催のウェビナー「炎上回避最前線‼︎ 理解しておくべきステマに対する正しい知識」の中から、インフルエンサーマーケティングを安心して実施検討いただくためのポイントについて、登壇者の阿部 孝裕が紹介していきます。

目次

ステマ認定されないためには、どうすればいい?

年20%増ペースで推移しているインフルエンサーマーケティング市場。サイバーバズの調査では2023年には741億円規模になると予測されています。具体的にどれだけタイアップ・PR投稿がされているかというと、2022年8月のとある1週間、YouTube・Twitter・Instagram(フィード投稿)の投稿の合計だけで、なんと18,000件も行われていることがわかりました。もはや、インフルエンサーの活用はB2Cビジネスのマーケティングにおいて定番と言えます。

そんなインフルエンサーマーケティングにとって大きなリスクとなるのは、ステルスマーケティング(以下、ステマ)による炎上です。『PRSJ PR用語ミニ辞典』によると、「『ステルス』とは隠密を意味し、自らの正体や広告であることを隠した広告のことを指す」と定義されています。つまり、ステマとは、「金銭や商品提供をもとに(インフルエンサーが)PR依頼を受けつつも、企業との関係性を明示せず情報発信をすること」だと言えます。

それが故意であろうとなかろうと、もしインフルエンサーが発信する情報がステマだと消費者(SNSユーザー)にみなされてしまったら、関係各者に次のような損失が生じることになるのです。

  • 広告主:消費者に対するブランドイメージや信頼の損失
  • 広告代理店・PR会社:取引先/業界に対する信頼の損失
  • インフルエンサー:ファンに対する信頼の損失

ステマに関するネガティブな話題は、消費者間での情報拡散に歯止めが効かなくなりがちです。さらに、ステマは法律で厳格な線引きがされているわけではないため、客観性を持ったガイドラインや消費者庁の動向をチェックして、最新情報をキャッチアップしておくことが重要になります。ちなみに、客観性を持ったガイドラインとは、WOMマーケティング協議会の「WOMJガイドライン」や消費者庁の「景品表示法」のようなものを指し、これらに準拠するだけでもステマだとみなされるリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

では、ステマとみなされないためには、具体的に何を守れば良いのでしょうか。それはズバリ「関係性を明示すること」です。ここで言う関係性とは、「主体=企業・ブランド」と「便益=利益を得て実施している旨」を意味しており、インフルエンサーが投稿する際に、必ず「企業・ブランド」から金銭もしくは商品・サービスを「提供された」と記載する必要があります。

プラットフォームによって異なるタイアップ・PR投稿のルール

今ではインフルエンサーマーケティングが普及してきたことで、各プラットフォームにおいても対応が進み始めています。YouTube・Twitter・Instagram・TikTokの4つのプラットフォームについて、それぞれのルールをご紹介していきましょう。

YouTubeでは有料プロモーションの設定が必須

YouTubeでは、動画投稿時に「有料プロモーション」の項目にチェックを入れなければなりません。

この設定をすると、動画内に「プロモーションを含みます」と表示されるようになります。もしチェックを入れずに投稿者が便益を得ていると発覚した場合、動画が公開されなくなるなどのペナルティが課される可能性がありますので、インフルエンサーには必ずここにチェックを入れてもらうよう、事前に伝えておくことが大切です。また、WOMJのガイドラインにのっとり、動画概要欄の最上段には、提供元を記載しておくことも重要です。

Twitterはプラットフォームの決まりはないが#PRをつけ明記する

Twitterに関しては、プラットフォームで用意されているルールはありません。他方、ガイドラインのルールにのっとり、「#PR」と付けることが暗黙の了解となってはいますが、それに加え、提供元もハッシュタグで記載しておくことが望ましいと言えます。

Instagramはブランドコンテンツの設定を推奨

SNSの中で最もタイアップ・PR投稿が多いInstagramでは、プラットフォームのルールとして「ブランドコンテンツ」の設定が推奨されています。

インフルエンサーによる投稿時に、詳細設定にある「タイアップ投稿ラベルを追加」をオンにする必要があります。こちらもYouTubeと同様に、インフルエンサーには必ずここをオンにしてもらうよう伝えておくことが大切です。また、「ブランドパートナーを追加」から広告主のブランドアカウントを選択し、それを広告主のアカウントで承認することで、広告主のアカウントと連携できるようになります。広告主がInstagramアカウントを持っていなければ利用できない機能ではありますが、米国では当たり前のように使われているものです。したがって、日本でも近い将来、必須項目になる可能性があるため、注意して最新情報をチェックしておくと良いでしょう。

TikTokもブランドコンテンツの設定を推奨

TikTokにも、投稿時の詳細オプションから「ブランドコンテンツ」の項目をオンにすることで、タイアップ・PR投稿である旨を表記できる機能があります。ガイドラインのルールについても、他のプラットフォームと同様に、主体である提供元や便益をハッシュタグで記載しておきます。

なお、便益の内容によって使用できるタグが異なります。こちらもあわせてご参照ください。

広告主の皆様としては、「PRなんて付けると効果が悪くなるのでは?」と懸念される方も少なくないと思います。しかし、実は消費者はそこまで気にしていないという調査結果が出ているのです。次のグラフをご覧ください。

2022年にTHECOOが行った調査結果によると、インフルエンサーのPR(タイアップ)投稿を見たとき、通常の投稿と比較して商品・サービスに対する信頼性が「高まる」か「変わらない」と答えた人は、60%近くに上っています。

このことから効果を気にして炎上リスクを冒すよりも、しっかりとルールを守ってステマを回避するほうが、企業やブランドにとってプラスであると捉えたほうが得策です。

ぜひインフルエンサーマーケティングを実施される際には、必ず「主体と便益を記載する」ことを忘れないようにしましょう。

目的に応じたキャスティングやクリエイティブ制作を

続いて、タイアップ・PR投稿におけるキャスティングやクリエイティブ制作で注意すべき点についてお話しします。タイアップ・PR投稿であっても、インフルエンサーが本当に好きな商品を紹介するというのは、ファンからの反感を買わないために、非常に重要なポイントとなります。

まずはキャスティングについて。以下のおふたりはどちらもメイクやファッションを軸に活動されているインフルエンサーとなります。

アイコンやサムネイルだけを見ると、一見どちらを起用しても同じなのではないかと思いますが、コンテンツの中身を詳しく見てみると、実は大きな違いがあることがわかります。上記のグラフは、投稿ジャンルごとに色分けし、視聴回数で分類したものですが、Aさんは商品レビューがメインであるのに対し、Bさんはメイク方法がメインとなっています。つまり、商品のスペックに関して情報発信したい場合はAさんを、実際の使用方法について紹介したい場合はBさんを起用したほうがいいということになります。

次に、クリエイティブについて。弊社の「iCON Suite」というインフルエンサーマーケティングツールを使って、Instagramに投稿した2つのクリエイティブの効果を比べてみました。ちなみにグラフの青は通常投稿、赤はタイアップ・PR投稿で、こちらは右へ行けば行くほど「いいね」が多いことを示しています。

明確に「商材メイン」のほうが「いいね」が少なく、「インフルエンサー本人メイン」のほうが「いいね」が多いことがわかります。基本的にInstagramの通常投稿はインフルエンサーのファンが見るため、「インフルエンサーがかわいい」と思ってもらえると「いいね」が増える傾向にありますが、コメント数は「商材メイン」のほうが多くついています。

したがって、「認知」を取りたいのであれば「本人メイン」、「態度変容」を促したいのであれば「商材メイン」といったように、インフルエンサーの意向も反映しながら、うまく使い分けていくことが大切です。

このように、タイアップ・PR投稿におけるキャスティングやクリエイティブを考える際には、フォロワー数などの表面的な定量的な情報だけでなく、普段の投稿内容やコメントの傾向といった定性的な情報も含めてチェックしていくと、失敗を減らせる可能性が高まります。

とはいえ、複数のインフルエンサーについて細かく比較検討するのは多大な労力がかかりますし、そもそも自社のターゲットにぴったりと当てはまるインフルエンサーをリストアップすることも決して容易ではありません。さらに、依頼するインフルエンサーが決まっても、ブランドの要望とインフルエンサーの世界観をうまくすり合わせながら投稿まで進めるためには細かな調整が必要となり、多くの労力を必要とします。

インフルエンサータイアップを実施の際には、必要なリソースを鑑み、弊社のような代理店に依頼いただくことをぜひご検討ください。