近年ますます取り組む企業が増えているインフルエンサーマーケティング。2022年の段階で、YouTubeでは1日80件、Instagramでは1200件以上のタイアップ投稿が行われており、この数からもインフルエンサーマーケティングの盛り上がりを感じていただけるのではないでしょうか。

しかしながら、多くの企業が取り組む一方で、社内でその効果を証明し伝えるのに苦戦している、という声も多く耳にします。この記事では、なぜ効果証明が難しいのか、そんな中でも社内で認めてもらうために成果をどのように定義し、測定して伝えていけばよいかを紹介していきます。

 

目次

 

直接的な効果測定の難しさ

インフルエンサーマーケティングの効果測定は、再生回数やインプレッションなどの「リーチ数」や、いいね、コメント、保存などの「エンゲージメント数」、SNSによっては「リンククリック数」などの指標が用いられます。これらの指標では、各施策や投稿を横並びで比較することはできますが、社内で聞かれる「売上にどれだけ貢献したのか」という質問への回答に答えるには、不十分なことが多いです。

それでは、なぜ売上への貢献の証明が難しいのでしょうか。

この理由には、第一にSNSプラットフォームの制約が挙げられます。インフルエンサーマーケティングと一口に言っても、どのSNSを使うかによって、リーチ数や再生回数、エンゲージメント情報など、取得できる情報がさまざまであったり、そもそも投稿形式によっては直接購入を促すためのリンクを貼ることができず、トラッキングが途切れてしまうことがあります。これは、SNSプラットフォーマーからすればアプリ内でできるだけ長く回遊してほしいという思惑もあるため、当たり前ではあります。

また、テレビCMなどと同様の効果測定の手法を用いたとしても、インフルエンサーマーケティングはほとんどの場合相対的に予算が小さく、そのインパクトは限定的です。マイクロインフルエンサーの起用などでは、指名キーワードでの検索数の増加などの指標もノイズレベルの変動になってしまうこともしばしばあります。

インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとファンの距離の近さ、ファンの熱量の高さ、そして投稿内容の質の高さによって大きな態度変容を促せる、というメリットがありますが、そのメリットを直接的に測定しづらく、単純に既存の広告施策と比較してしまうと、テレビCMほどはインパクトが大きくなく、一方で、運用型広告よりはCPAが悪い、という結果に陥ってしまいがちです。

 

インフルエンサーマーケティングの効果測定に使われる指標

インフルエンサーマーケティングでは直接的な効果を測ることが難しいとはいえ、データが全く取れないわけではありません。他のキャンペーン同様、キャンペーン単位の指標を用いて効果を測定します。大きく分けると、指標には「投稿指標」「行動指標」「売上指標」があります。

投稿指標

インフルエンサーの起用金額は、フォロワー・チャンネル登録者数または平均再生回数を基準に決まることが多く、投稿がどのくらい伸びるかでCPV(1視聴あたりの金額)が変動するという計算になります。投稿指標はリーチに関わるものと、興味・好意を示すエンゲージメントに関わるものの2種類に分かれます。

リーチに関わるもの

  • リーチ数:投稿を見たユーザー数
  • インプレッション数:投稿が表示された回数(1ユーザーが複数カウントされる)
  • 再生回数:YouTubeの場合

エンゲージメントに関わるもの

  • いいね数・ライク数
  • コメント数
  • 保存数:Instagramでフィード・リール投稿が保存された数

行動指標

投稿を通じて商品・サービスに興味を持った後の直接的な行動を計測する指標です。

  • リンククリック数:YouTube、Twitter、Instagramストーリーに計測用リンクを記載し追跡
  • 投稿出現数:主にTwitterで商品・サービスに関するキーワードが含まれるUGCの数を計測、近年はYouTubeの切り抜き動画などで反応を示す例も

売上指標

  • リンク経由購入数:計測用リンクをクリックしそのまま購入に至った数
  • キャンペーンコード使用数:インフルエンサーの投稿に記載したキャンペーンコードを利用して購入に至った数
  • UGC創出数:TwitterやInstagramなどで実際の購入後のメンションを計測

 

インフルエンサーマーケティングの効果の算出方法

大規模な計測システムを導入しない限り、現実的にはこれらの指標を組み合わせて計測していくことになります。その前提として、お伝えしたいことがあります。

THECOOが実施した調査では、SNSで商品・サービスの情報を見た後に購入したタイミングについて、「SNSを見た後、すぐ」の経験がある人は6割程度にとどまっていることがわかりました。一方で、「SNSを見た後、時間がある時」と回答した人は8割以上にのぼっています。

さらに、情報を見た後の行動として、「SNSに記載されているリンクをクリックして情報を見た」経験がある人は約半数にとどまっています。

つまり、インフルエンサーの情報が影響を与えたとして、売上指標で測定できる直接的な行動はあくまで全体のごく一部であることがわかります。実際には、検索エンジンで検索したり、外部の通販サイトや比較サイトなどで商品を探しに行ったりすることが考えられます。

検討型の商材であれば当然ではありますが、SNSの情報を見て商品・サービスを購入したことがある人の中でも、よく目にするようになり、徐々に欲しくなった経験がある人は8割以上に上ります。

このようなデータからも、インフルエンサーマーケティング施策が直接的に売上に結びつくことが難しいことがわかります。

それでは、どのようにして効果を推定すればいいのでしょうか。

 

もっと知りたい

調査結果について詳しく知りたい方は、下記の資料をご覧ください。

SNSを介した購入経験に関する調査

 

購入者調査の実施

多くの企業・ブランドで会員組織を持つようになり、製品登録を促進させたり会員向けに商品に関するアンケートを実施するなど、さまざまな個人データを保有するようになっています。一方で、リサーチパネルのサービスの中にはパネリストの購入データを持ったサービスも提供するようになっています。このように、社内・社外の消費者データを活用することで、統計学的に消費者の購入経路や認知経路などの調査が実施できるようになってきました。

 

ツリー形式で逆算し、売上と投稿指標を紐づける

より推定的になる手法ではありますが、カスタマージャーニーを分解し、購入までの道筋をいくつかのフェーズに分けることで、指標ごとの歩留まりを計算しながら売上貢献の推測値を出すこともできます。

とても抽象化したものになりますが、購入(とリピート)までの流れでは、以下のようなステップが考えられます。

リーチ(認知) → エンゲージ(興味) → 検索(検討) → 購入 → リピート

このステップで、SNSで計測できる「リーチ」や「エンゲージメント」のようなデータから貢献度を算出するのです。この形で貢献度を逆算する場合には、以下の2つの前提が必要となります。

  1. 購入の前段階の中間指標を見つけ、KPIに設定する
  2. インフルエンサーマーケティングの各施策の目的をカスタマージャーニーのフェーズと一致させる

ここで気をつけるポイントとしては、各フェーズの遷移指標は少なければ少ない方がよいですが、消費者の行動は多種多様なため、完全にこのモデルに当てはめることはできないということです。また、SNS経由の購入経路のオンライン、オフライン比率や、オンラインチャネル内での自社サイトでの売上比率などを明確にできると、より数値を算出しやすいでしょう。

他の広告施策との比較

広報施策では広告換算費で効果を報告されることもあると思いますが、同様の考え方で他の広告施策に換算することも可能です。テレビCMや雑誌、Webメディアの記事広告との比較で、インフルエンサーマーケティングを通じた拡散でどれくらいの露出が生まれたかを確認します。

広告換算費での注意点は、あくまで拡散・露出の効果をはかることしかできず、インフルエンサーマーケティングの特徴でもある「深いコミュニケーションで態度変容を促す」効果を測定することはできないということです。

 

効果を正しく測定するするために

ここまで紹介してきたように、SNSプラットフォームの特性上、インフルエンサーマーケティングの売上への貢献を正しく測ることは決して簡単なことではなく、推定値をもとに算出していく必要があります。

そのため、効果を可能な限り正しく測定するためには、インフルエンサーマーケティングを担当者のみで実施するのではなく、社内のデジタル部門やシステム部門、あればデータサイエンス部門などと連携し、どのように効果を測っていきたいか、どのようにデータを蓄積していきたいかを相談しながら進めていくことが必要不可欠です。

また、各SNSの仕様も常に変わっていきます。取得できるデータが変わることもあるので、定期的にキャッチアップすることをおすすめします。

THECOOでは、インフルエンサーマーケティングの投稿指標の蓄積だけでなく、インフルエンサーマーケティングの目的の設定、どのような形で効果を測っていくかについても相談いただけますので、お悩みのことがあればお気軽にご相談ください。