プロモーションの1つの手法として、割引によるキャンペーンはさまざまな場所で提供されています。また、近年の値上げラッシュとも相まって、割安感を感じやすい割引に反応する人はますます増えていると推察されます。

インターネットやSNSからトレンドが生み出されるのが当たり前になった今日、流行に敏感なZ世代は割引にどのように触れ、どう反応しているのでしょうか。

THECOOでは、Z世代の現役大学生である早稲田大学の公認サークル、早稲田マーケティング研究会と共同でさまざまな取り組みを行っています。今回は、15〜25歳までのZ世代に向けて共同でインターネットリサーチを行い、Z世代が割引にどのように反応するのかを調べました。また、調査結果をもとに、Z世代のリアルな行動について実体験をもとに考察してもらいましたので、その内容を記事にまとめました。

目次

「Z世代の割引キャンペーン利用状況に関する調査」について

今回実施した調査は、「Z世代の割引キャンペーン利用状況に関する調査」というテーマです。調査対象は、15〜25歳の男⼥のうち、事前スクリーニング調査にて「過去1年間で商品割引を利⽤して購⼊したことがある」と回答した⽅1,000名です。

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調査結果の資料はこちらからご覧ください。

Z世代の割引キャンペーン利用状況に関する調査

調査項目

Q1:過去1年間に、割引に関する情報を目にした後、割引された商品・サービスを購入した頻度は平均するとどのくらいですか。
Q2:過去1年間で、割引を利用して商品・サービスを購入した際、その割引情報をどんな媒体で目にしましたか。
Q3:過去1年間でどのSNSで割引情報を見て商品・サービスを購入しましたか。
Q4:どのSNSで見る商品・サービスの割引情報を最もよく参考にしますか。
Q5:過去1年間で、割引情報を目にした商品・サービスをどんな場所で購入しましたか。
Q6:過去1年間で利用したことのある割引形式を教えてください。
Q7:この中で最もよく利用する割引形式を教えてください。
Q8:過去1年間で、どの価格帯の商品やサービスを割引を利用して購入した経験がありますか。
Q9:過去1年間で、商品・サービスの割引情報を目にしたことによる以下の経験はありますか。
Q10:過去1年間で、商品・サービスの購入時に割引が与えた影響について、経験があるものを教えてください。
Q11:過去1年間に、割引を利用して商品・サービスを購入した際、割引以外の以下の要因が購入の後押しになったことはありますか。
Q12:過去1年間に、(割引されているかどうかに関わらず)SNSで情報を見て商品やサービスを購入したことはありますか。
Q13:過去1年間にSNSで情報を見て購入した商品・サービスについて、SNSでどのくらい目にした後に購入に至った経験がありますか?
Q14:同じ商品・サービスの情報をSNSで何度も見たことによって、その商品・サービスのことを不快に感じたことはありますか?

Z世代メンバーによる調査に関する考察

各調査項目について、調査企画を行った早稲田マーケティング研究会のメンバーに結果の考察を行ってもらいました。過去1年間で割引を利用したことがある人のみに調査対象を絞ったことで、より具体的な行動がどのように取られるかを知ることができました。

割引を目にした頻度や媒体、形式など

まずはZ世代はどの程度割引を利用しているのか、そしてそれをどこで目にし、どこで利用しているのか、などを調査しました。結果からはZ世代ならではの行動が見えてきました。

Q1:過去1年間に、割引に関する情報を目にした後、割引された商品・サービスを購入した頻度は平均するとどのくらいですか。

全体の割合を見ると月に1回以上と回答した人が一番多く、40%近くになります。コロナ禍の影響でオンラインショッピングが増え、それに伴って割引を利用する人も増えたのではないかと推測されます。また、世代による大きな差も見受けられませんでした。

一方で、「週1回以上割引を利用して商品を購入する」割合は10代よりも20代の方がやや多くなりました。これは、20代になると一人暮らしをする人が多くなり、少しでも節約して生活をしようとしているからではないかと推測されます。また、コンビニなどを利用する際に割引を利用しているということも推測され、10代よりも20代の方が行動範囲が広がるに伴って割引を利用することが増えているのではないだろうかと推測されます。

Q2:過去1年間で、割引を利用して商品・サービスを購入した際、その割引情報をどんな媒体で目にしましたか。

割引の情報を目にした媒体は「SNS・動画共有サイト内」と答えた人数が47.9%と最も多くなりました。Z世代はSNSの検索機能を使って情報収集を行うという習性があることから「SNS・動画共有サイト内」と答えた割合が多いのではないかと推測されます。「SNS・動画共有サイト内」と答えた女性の人数が男性の人数よりも多いのは、そもそもSNSアプリには女性向けのPR投稿や広告が多いからなのではないかと推測されます。

また、SNSに次いで「その他スマホアプリ」「LINEなどのメッセージアプリ内」と答えた人が多いことから、Z世代には総じてスマートフォンを用いた割引を提供することが効果的だといえそうです。

Q3:過去1年間でどのSNSで割引情報を見て商品・サービスを購入しましたか。

Q2の質問を受け、SNSに媒体を絞ってさらに質問を実施しました。その結果、全体を通して女性の方がSNSの割引情報を見て購入の経験がある人が多く、情報収集としてのSNS利用は女性の方が多いのではないかと考えました。特に、Instagramで情報を見て購入した割合が、女性は70.2%と高いので「インスタ映え」やハッシュタグを多く使用した投稿など、女性向けの投稿だけでなく、女性が商品を紹介していることの方が多いのではないかということが推測されます。

また、TwitterやInstagramは検索などで能動的に情報を探しにいくが、YouTubeは受動的に情報が流れてくることが多いです。このことから、情報収集を受動的に行うことが多い男性は、各SNSの情報を見て購入した人の割合が50%程度とほぼ同じになっているのではないかと推測できます。一方で、能動的に情報収集を行うことが多いと考えられる女性はYouTubeからの購入の割合が女性全体の中では34.9%と低くなっているのではないかと考えました。

Q4:どのSNSで見る商品・サービスの割引情報を最もよく参考にしますか。

Q3に続き、Q4では最もよく参考にするかという、単独回答の質問となりました。その結果は圧倒的にInstagramと回答した人数が多く、特に女性の割合が高くなりました。反対に、男性の割合が多いのはTwitterとなり、男女差が顕著に現れる結果となりました。

これは各SNSの利用者数に起因しているのではないかと考えます。また、Instagramの特性として「美意識」に関わる内容が多いため、情報を吸収して自分も参考にしようと思っていることがわかりました。Twitterは男女ともに同じくらいの割合で利用者はいるものの、女性は利用するSNSが男性に比べて多く、それぞれのSNSを利用する割合が相対的に希薄化しているのではないかと考えます。

その他のSNSでも、YouTubeは男性の割合が高く、絶対数は少ないもののTikTokでは女性の割合が高いという結果になっています。日々の私生活においての男性と女性が利用するSNSには少々偏りがあるといえます。

そうすると、SNS広告で商品を購入してもらいたい、と考えたときには「その商品のターゲットは男性なのか女性なのか」を明確にしてから施策を行うのがよいのではないでしょうか。先ほど「女性は利用するSNSが多い」と書きましたが、1つのSNSに重点をおいて予算をかけるのではなく、さまざまなプラットフォームを組み合わせたSNS施策を立て、プロモーションするというのが女性をターゲットにする場合には望ましいのではないでしょうか。これからの時代、商品は専門性が求められ、開発の段階からターゲットを明確に絞っておく必要があるのかもしれません。

Q5:過去1年間で、割引情報を目にした商品・サービスをどんな場所で購入しましたか。

割引を利用した場所では、総合型通販サイトと実店舗の2つで割引を利用して商品を購入する人が多いという結果になりました。年代別に見ると、10代は実店舗での利用が最も多く、20代は通販サイトでの利用が最も多いという結果になりました。仮説として、10代は通販サイトのアカウントを持っていない人が多く、20代になると自分で通販サイトのアカウントを登録する人が増えることが考えられます。

また、Z世代の人も実店舗で割引を利用して商品を購入することに抵抗が無いことがわかったため、店舗で実際に物を見てから購入する商品に対しても割引を提示することは有効だといえます。

Q6:過去1年間で利用したことのある割引形式を教えてください。

全体としてクーポン利用による割合が一番高く、その次に多いのはセールなどの季節性の割引でした。これらの割引方法はどちらも実際の店舗やインターネットでよく見かけるもので、Z世代の人もよく利用していることがわかります。

内訳をみるとどちらも女性の利用者が多いので、男性よりも女性の方が割引に敏感に反応していることがうかがえます。

Q7:この中で最もよく利用する割引形式を教えてください。

全体として、クーポンによる割引を最もよく使う人の割合が高くなりました。中でも、10代女性が特に多い傾向にあり、66%にのぼります。クーポンによる割引の次に最も利用する人の割合が多いのは、セールなどの季節性の割引でした。季節性の割引に関しては、意外にも10代女性の割合が最も低い結果となりました。

Q8:過去1年間で、どの価格帯の商品やサービスを割引を利用して購入した経験がありますか。

割引利用での購入金額は全体を通して「1,000〜9,999円」が一番数が多くなっていることがわかりました。これは、単純に普段の一回の買い物で使う金額が大体このくらいの値段であり、その分割引を使うタイミングが多くなっているからではないかと考えられます。

一方で、他の項目と比べて範囲の少ない「999円以下」が、「1,000〜9,999円」の半数近く、しかも「10,000円以上」の人数よりも多い280人もいることがわかりました。内訳をみると10代女性がやや多いものの、ほとんど均等にわかれています。年代性別によって変化が見られないということは、Z世代の男女なら誰でも使うような場面で割引を使用しているといえます。

今後の展望としては、30〜60代に対しても、少額でクーポンを使っているかをアンケートすれば、Z世代特有のものなのか判断できるのではないかと考えました。

割引によってもたらされた態度変容

割引はただ欲しいものを安く買える手法ではなく、割引を通じて強い関心を引く可能性も秘めています。Z世代は割引情報によってどのような態度変容を経験しているのかを調査しました。

Q9:過去1年間で、商品・サービスの割引情報を目にしたことによる以下の経験はありますか。

Q.9-2に着目すると、割引の情報を目にして初めて認知した商品をそのまま購入したことがある人は、男性では、10代:78%、20代:83%。女性では、10代:85%、20代:91%にのぼることがわかり、男女ともに非常に高い割合でした。

この結果を引き起こした要因として、若者は少ない情報量で購買意思決定することに対して、抵抗感が少ない。もしくは、認知段階では情報量は少なくとも、SNSやインターネットを使った情報探索能力に長けているため、その情報探索能力によって購買を決定するだけの情報を集めることができる、という二つの要因があると考えました。

次に、Q.9-4に着目すると、割引の情報を目にして、「2回目」以降継続して購入した経験のある人は、男性では、10代:74%、20代:75%となり、女性では、10代:65%、20代:81%にのぼることがわかりました。この結果をQ.9-2と比較すると、10代女性で大きな変化が見られることがわかります。

10代女性は比較的継続購入の経験がある人が少ないです。これは、10代女性が最も流行に敏感であることが一つの要因であると考えられます。その時々に流行しているものを身に付けたいという意識によって一つの商品を継続的に購入するよりも、流行を重視していることの表れであると推測されます。

Q10:過去1年間で、商品・サービスの購入時に割引が与えた影響について、経験があるものを教えてください。

「元々いつか買おうとしていたものを割引によって後押しされて購入した」という回答が5割を超え、最も多かったです。元から買う予定であったため、よりお得感をより感じるのではないかと考えます。

また、全体の36%の人が、買うつもりのなかった商品を割引によってお得に感じ、購入したという結果も得られました。そのため、割引を通じて新たに興味を喚起できていることもわかりました。このような結果から、割引は消費者の購買行動に大きな影響を及ぼしているといえます。

Q11:過去1年間に、割引を利用して商品・サービスを購入した際、割引以外の以下の要因が購入の後押しになったことはありますか。

まず、「商品・サービスの価格に魅力を感じた」割合より、「SNSで話題になっていると感じた」割合の方が多いことに驚きを感じました。購入の後押しに対しての要因が、商品自体の実質的な要素よりもSNSなどでの流行の方に比重が大きくなってきているのです。

一方で、特に女性は「レビュー(口コミ)評価が良かった」との回答も多くありました。これは、女性が単にSNSで話題になっていたら買うのではなく、購入前に自分以外の他人が使ってみた結果がどうだったかを気にしており、ある意味では買うかどうかを慎重に吟味しているととらえることもできます。

そして、ここで取り上げたいもう一つの内容は「インフルエンサーマーケティング」についてです。こちらも、10代男女・20代女性の間では特に浸透していることがわかりました。インフルエンサーマーケティングが比較的最近のトレンドでありながら、ここまで浸透しているのは「人が実際に話して広告する」ことのパワーがとても大きいといえます。

テレビがメディアの中心だった時代、商品の宣伝と販売といえば「通販番組」を思い浮かべていたと思います。それがそのままチャネルがSNSとなり、今日の人々に浸透しているのが「インフルエンサーマーケティング」なのではないかと考えました。また、10代では結果に男女差がほぼない点も魅力の一つであると感じました。

SNSを通じた購入意向の変化

最後に、割引にも大きな影響を与えていることが明らかになったSNSについて、割引に関わらずどのように情報に触れているかを調査しました。

Q12:過去1年間に、(割引されているかどうかに関わらず)SNSで情報を見て商品やサービスを購入したことはありますか。

SNSの情報を見たことで一度でも商品の購入に至った人の割合は8割を超え、SNS上の情報が商品やサービスの購入に大きく影響を与えていることがわかる結果となりました。この結果を男女別にみると、女性のほうが割合が高いことがわかります。これはSNSの利用率、購入する品目にも関係しているのではないかと考えます。

Q13:過去1年間にSNSで情報を見て購入した商品・サービスについて、SNSでどのくらい目にした後に購入に至った経験がありますか?

2〜3回SNS上で見かけてから購入するという回答が圧倒的に多かったです。この結果はQ.11の結果にも関係していると考えられます。Q11において購入に至った理由として「SNSで話題になっていると感じた」をあげる人が非常に多かったです。

SNS上で何回か見かけることで、この商品は流行っていると感じ購入に至るケースが多いのではないかと推測する。また、SNSで初めて見かけ購入に至ったケースも1,000人中200人弱と意外に多いです。いわゆる衝動買いもSNSからの情報によって起こっていると推測されます。

Q14:同じ商品・サービスの情報をSNSで何度も見たことによって、その商品・サービスのことを不快に感じたことはありますか?

同じ商品の情報を繰り返し目にしても不快に感じたことがない人の割合が思ったよりも多い結果になりました。特に女性は70%近くの人が不快に感じないと回答しています。この要因は、近年、個人の閲覧情報などをもとにユーザーが興味を持ちそうな広告が表示されることが多いためだと推測されます。

また男性向けの広告と比較すると、女性向けの広告は手の込んだものが多いというのも不快に感じる女性の割合が低い要因の1つと考えられます。つまり、同じ商品の情報を繰り返し見ても不快にならない人の割合が多いことから、ある程度の質の広告ならば、適切な間隔をあけて何度も表示させることは有効ではないかと考えます。

THECOOからのまとめ

今回の調査を通じて、割引情報を目にする中心がSNSへと移り変わったこと、実店舗以上に通販サイトでの割引の影響力が増していること、セールよりもクーポンの方が利用頻度が高まっていることなど、Z世代特有の割引情報への接し方が明らかになりました。

Z世代を対象とした企業の今後のプロモーションにおいては「SNS活用」「オンライン販売」「クーポンの効果的な配布」などが成功の鍵になると考えられます。Z世代のリアルな考察が、これからのマーケティング、プロモーション強化の参考になれば幸いです。

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調査結果の資料はこちらからご覧ください。

Z世代の割引キャンペーン利用状況に関する調査