マーケティング担当者がプロモーション企画の立案、ならびに実行のディレクションを行っていく上で欠かせないのが「与件整理」です。

近年のマーケティング施策は自社や関係の深いパートナーだけでは実施できず、さまざまな関係者と関わっていく必要があります。中でも、消費者のSNS利用時間が増え、インフルエンサーの影響力はますます高まっています。インフルエンサーマーケティングに取り組む企業も大幅に増えており、広告手法として無視できないものになってきました。しかし、マーケティング手法としてはまだまだ成熟したとは言えない状況で、思ってもいなかった落とし穴にはまることがあります。

この記事では、与件整理が必要な理由や、インフルエンサーマーケティングにおいて必要な与件情報のまとめ方を紹介します。

目次

なぜ与件整理が必要なのか

与件とは、企画やプロジェクトなどをすすめるにあたって与えられる前提条件のことです。ひとつひとつの与件の意図や背景を企画に携わる関係者が相互に理解し、全員が見やすく整理をすることが、与件整理となります。

与件整理は、インフルエンサーマーケティングに限らずプロジェクトを進めていくにあたって大事な最初のステップであり、マーケティング担当者にとっては、あらゆる企画やプロジェクトを実施するにあたって欠かせないタスクの1つです。

ではなぜインフルエンサーマーケティングでは与件整理が重要なのでしょうか。

携わる関係者が多い

1つ目は、既存のデジタル広告やSNS施策よりも携わる関係者が多くなるケースが多いことです。個人インフルエンサーと企業とで直接やり取りをする場合もありますが、案件を実施する規模のインフルエンサーとなると、大抵の場合は代理店や事務所が間に入ることの方が多いでしょう。


さらに、インフルエンサーはあくまで一般人でありビジネスパーソンではないため、案件への向き合い方は人によってさまざまであることが挙げられます。全ての関係者が、インフルエンサーマーケティング成功のために同じ方向を向けるよう、伝わりやすい情報を整理しておくことが必要です。

施策目的が幅広い

2つ目は、インフルエンサーマーケティング実施の目的を明確にしておくためです。他の施策でも実施の目的を明確にすることは必要ですが、インフルエンサーマーケティングでは特に重要です。

というのも、インフルエンサーマーケティングはさまざまな施策目的に応じて、その後の方向性が大きく変わってきます。具体的には、SNSプラットフォームや起用すべきインフルエンサー、企画などが異なってきます。また定性的な判断が必要な場面もあり、進めていくうちに迷いが出ることもしばしばあります。そういった時に立ち返るためにも情報を整理しておくことでスムーズな施策進行ができます。

これらの理由からも、インフルエンサーマーケティングは取り組み前の与件整理がとても重要となります。

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インフルエンサーマーケティングのよくある失敗

それでは、与件整理や情報の不足が起こった場合どのようなことが起こり得るのでしょうか。ここでは、インフルエンサーマーケティングでの失敗ケースを紹介します。

商材とマッチしていないインフルエンサーのキャスティング

まずはじめに失敗しやすいポイントは、インフルエンサーをキャスティングする時点で商材やブランドとマッチしていないことです。

インフルエンサーをキャスティングする際、再生数やフォロー数、エンゲージメント率など定量的な判断をすることも重要ですが、インフルエンサーの投稿スタイル・性格、ファンの特徴といった定性面にも着目しなければなりません。

特に、インフルエンサーの特徴からファン層を想定することは重要です。年代や男女比などのデモグラ情報だけではなく、ファンはインフルエンサーのどの部分に熱狂しているのか把握しておく必要があります。

こういった定性面を見逃したキャスティングをしてしまうと、次項の投稿イメージのすれ違いが発生します。

投稿イメージのすれ違い

インフルエンサーマーケティングを実施する際に、投稿イメージが想像していた内容と違うといったことがあります。「投稿イメージのすれ違い」は、企業・ブランドとインフルエンサーの間、またインフルエンサーとそのファンとの2ヶ所で発生する可能性があります。

企業・ブランドとインフルエンサー間のすれ違い

例えば、コスメ系の案件を依頼した場合、企業側は商品レビューを想定していたのに、実際の投稿内容は、商品を使ったテクニック紹介がメインだった、などです。

カテゴリやジャンルが同じインフルエンサーであっても、投稿スタイルは様々です。これは、インフルエンサーへの指示が曖昧だった可能性もありますし、そもそもキャスティングの時点でマッチしていないインフルエンサーだったのかもしれません。

インフルエンサーとファン間のすれ違い

2つめのすれ違いは、ファンから見て普段の投稿スタイルと違う・違和感がある、といったインフルエンサーとファン間の違いになります。

ファンはインフルエンサーの違いに敏感に反応します。案件とはいえ、あまりにも企業やブランドの意思が入りすぎているとやらされていると感じてしまい、インフルエンサー本人に失望したりそのブランドに対してもマイナスイメージを抱く可能性もあります。

出典:THECOO調べ「インフルエンサーのPR投稿を通じた影響力調査(23年6月)」

こういったすれ違いを起こさないためにも、事前に企業・ブランド側の意向と、インフルエンサーの意向をしっかりとすり合わせておくことが大切です。

施策目的が曖昧

最後に起こりがちな問題は、施策目的が曖昧なままスタートしてしまったケースです。

インフルエンサーマーケティングは、認知からコンバージョンまで、企画次第でさまざまな態度変容を促せるプロモーションです。しかし、1つの企画ですべての態度変容を網羅するような、魔法の広告ではありません。

加えて、SNSプラットフォーム側の制約やファンの熱量といった数値化がしづらいため、正確な効果測定が難しい広告手法です。

だからこそ取得が可能なデータ、例えばリーチ数やエンゲージメント数などの投稿指標や、リンククリックなどの行動指標、リンク経由のCV数やキャンペーンコード利用数などの売上指標と、自社で保有するデータを結びつけて、効果の推定とそれに紐づくKPIをしっかりと決めておく必要があります。

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インフルエンサーマーケティングに必要な4種の与件情報

では、インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぐために、具体的にどのような情報をそろえておく必要があるのでしょうか。インフルエンサーを活用した施策に必要な情報として、おおきく分類すると4種類の情報が必要です。

1. 商材・ブランドに関する情報

タイアップを依頼するインフルエンサーは、必ずしも商材やブランドを深く知っている訳ではありません。まずはブランド、そして商材を知ってもらうために、自社について簡潔に伝えるところからはじめるのがよいでしょう。

2. タイアップ実施の目的

次に、なぜインフルエンサー施策を実施したいのか、起用したいインフルエンサーやどういった結果を期待しているのか、などを共有します。

そうすることで、実際にタイアップするインフルエンサーは自分に求められていることが明確になり、ファンに向け、何をどのように伝えればよいか、より考えやすくなります。

3. キャンペーンの概要

インフルエンサーに依頼したい施策の全体像を中心に共有します。インフルエンサーによっては受ける案件の種類を決めていたり、SNSプラットフォームごとに投稿のスタイルが異なったりします。

また、人気のインフルエンサーであれば他にもタイアップ案件を抱えていることもあり、実施時期などの調整が必要になるため、具体的な与件が定まっていればいるほどタイアップが実現する可能性が高くなります。

4. 投稿内容に関する情報

最後に、実際の投稿を作成するにあたって必要な要素を揃えます。これまでのステップでまとめてきた商材に関する特徴など、投稿で必ず訴求してほしい内容などです。

商材によっては規制があったり、企業ごとにブランドガイドラインがあったりして、投稿内での発言や表記がNGなものが存在します。投稿の中でNG項目が入ってしまうと、そもそもの企画がお蔵入りになってしまうこともあるため、そういった内容もしっかりと伝えておきましょう。

施策整理テンプレートを使おう

前述でご紹介した4種類の内容を漏れなく整理するため、THECOOでは「インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぐ 施策整理テンプレート」を用意しています。

これまでインフルエンサー施策を経験していたり、普段からインフルエンサーをよく見ているなどがあれば、もっと深い情報になるはずですので追記していただければと思います。

初めてインフルエンサーマーケティングを検討している方はもちろん、実施経験のある方もさらに追加できる情報はないかチェックする意味でも、ぜひご活用ください。

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まとめ

いかがでしょうか。インフルエンサーマーケティングは、既存の広告・SNS施策よりもさらに積極的に施策に関与し、全ての関係者が成功のため同じ方向を向けるような旗振りが欠かせません。

始めは時間のかかる作業ですが、施策の成功に近づけるため、しっかりと与件整理の準備を行っていただけると幸いです。