マーケティング担当者がプロモーション企画の立案、ならびに実行のディレクションを行っていく上で欠かせないのが「与件整理」です。
近年のマーケティング施策は自社や関係の深いパートナーだけでは実施できず、さまざまな関係者と関わっていく必要があります。中でも、消費者のSNS利用時間が増え、インフルエンサーの影響力はますます高まっています。インフルエンサーマーケティングに取り組む企業も大幅に増えており、広告手法として無視できないものになってきました。しかし、マーケティング手法としてはまだまだ成熟したとは言えない状況で、思ってもいなかった落とし穴にはまることがあります。
目次
なぜ与件整理が必要なのか
与件とは、企画やプロジェクトなどをすすめるにあたって与えられる前提条件のことです。ひとつひとつの与件の意図や背景を企画に携わる関係者が相互に理解し、全員が見やすく整理をすることが、与件整理となります。
与件整理は、インフルエンサーマーケティングに限らずプロジェクトを進めていくにあたって大事な最初のステップであり、マーケティング担当者にとっては、あらゆる企画やプロジェクトを実施するにあたって欠かせないタスクの1つです。
与件整理が十分に行われていない場合、目的に沿っていない提案や企画につながったり、そもそもの目的を誤ってしまうことで望ましいアウトプットが出せなかったりと、せっかくの予算と時間を無駄に消費してしまう恐れがあります。
インフルエンサーマーケティングのよくある失敗
ここでは、与件整理や情報の不足が原因による、インフルエンサーマーケティングでの失敗ケースを紹介します。
投稿イメージのすれ違い
失敗が起こりやすいものとして、投稿イメージが想像していた内容と違うといったことがあります。
例えば、コスメ系の案件を依頼した場合、企業側は商品レビューを想定していたのに、実際の投稿内容は、商品を使ったテクニック紹介がメインだった、などです。
カテゴリやジャンルが同じインフルエンサーであっても、投稿スタイルは様々です。これは、インフルエンサーへの指示が曖昧だった可能性もありますし、そもそもキャスティングの時点でマッチしていないインフルエンサーだったのかもしれません。
いずれにしても、与件整理の時点でどんなインフルエンサーに、どのような投稿をしてほしいのか、イメージを固められていれば、回避できた問題です。
施策目的が曖昧
次に起こりがちな問題は、施策目的が曖昧なままスタートしてしまったケースです。
インフルエンサーマーケティングは、認知からコンバージョンまで、企画次第でさまざまな態度変容を促せるプロモーションです。しかし、1つの企画ですべての態度変容を網羅するような、魔法の広告ではありません。
加えて、正確な効果測定が難しいため、売上への貢献度を明示することが難しく、取得した数値から効果を推定値で算出しなければならない難しさもあります。もちろん様々なポイントの数値を見る必要はありますが、タイアップ目的にあった企画やキャスティングを行い、目的に対して結果がどうであったか振り返りを行う必要があります。
効果測定が難しいからこそ、与件整理の段階で、タイアップの目的と見るべきKPIをすり合わせておくべきです。
施策効果の算出方法などは以下のページからご覧いただけます。
インフルエンサーマーケティングにおける与件整理とは
では、インフルエンサーマーケティングにおける与件整理と、普段行っている与件整理ではなにが違うのでしょうか。
それは、一緒に企画をおこなっていくインフルエンサーは「消費者に近い存在」ということです。インフルエンサーの中にはビジネス経験のある人もいますが、やはり一般消費者としての感覚で発信してもらうことが、インフルエンサーマーケティングの強みでもあります。
そのため企業間の与件整理以上に、「誰がみても簡潔にわかりやすくまとめられていること」「インフルエンサーに求めている内容が明確であること」を意識する必要があります。
インフルエンサーマーケティングに必要な4種の与件情報
では、インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぐために、具体的にどのような情報をそろえておく必要があるのでしょうか。インフルエンサーを活用した施策に必要な情報として、おおきく分類すると4種類の情報が必要です。
1. 商材・ブランドに関する情報
タイアップを依頼するインフルエンサーは、必ずしも商材やブランドを深く知っている訳ではありません。まずはブランド、そして商材を知ってもらうために、自社について簡潔に伝えるところからはじめるのがよいでしょう。
2. タイアップ実施の目的
次に、なぜインフルエンサー施策を実施したいのか、起用したいインフルエンサーやどういった結果を期待しているのか、などを共有します。
そうすることで、実際にタイアップするインフルエンサーは自分に求められていることが明確になり、ファンに向け、何をどのように伝えればよいか、より考えやすくなります。
3. キャンペーンの概要
インフルエンサーに依頼したい施策の全体像を中心に共有します。インフルエンサーによっては受ける案件の種類を決めていたり、SNSプラットフォームごとに投稿のスタイルが異なったりします。
また、人気のインフルエンサーであれば他にもタイアップ案件を抱えていることもあり、実施時期などの調整が必要になるため、具体的な与件が定まっていればいるほどタイアップが実現する可能性が高くなります。
4. 投稿内容に関する情報
最後に、実際の投稿を作成するにあたって必要な要素を揃えます。これまでのステップでまとめてきた商材に関する特徴など、投稿で必ず訴求してほしい内容などです。
商材によっては規制があったり、企業ごとにブランドガイドラインがあったりして、投稿内での発言や表記がNGなものが存在します。投稿の中でNG項目が入ってしまうと、そもそもの企画がお蔵入りになってしまうこともあるため、そういった内容もしっかりと伝えておきましょう。
施策整理テンプレートを使おう
前述でご紹介した4種類の内容を漏れなく整理するため、THECOOでは「インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぐ 施策整理テンプレート」を用意しています。
これまでインフルエンサー施策を経験していたり、普段からインフルエンサーをよく見ているなどがあれば、もっと深い情報になるはずですので追記していただければと思います。
初めてインフルエンサーマーケティングを検討している方はもちろん、実施経験のある方もさらに追加できる情報はないかチェックする意味でも、ぜひご活用ください。
まとめ
いかがでしょうか。インフルエンサーマーケティングは、既存の広告・SNS施策よりもさらに積極的に施策に関与し、全ての関係者が成功のため同じ方向を向けるような旗振りが欠かせません。
始めは時間のかかる作業ですが、施策の成功に近づけるため、しっかりと与件整理の準備を行っていただけると幸いです。