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YouTubeブランドコネクトとは?Google公式ツールで変わるインフルエンサーマーケティングの未来
INDEX
インフルエンサーマーケティングは多くのブランドにとって重要なプロモーション手法となっていますが、「キャンペーンの効果が測定しづらい」といった課題をもつ担当者の方も多いのではないでしょうか。
そんな中、YouTubeが「YouTubeブランドコネクト(YouTube BrandConnect)」というプラットフォームをベータ版で提供していることをご存知でしょうか。これは、ブランドとクリエイターを効率的にマッチングし、インフルエンサーマーケティングのキャンペーン成果を計測、最大化するためのツールです。本記事では、その機能と日本での展開の可能性について詳しく解説します。
YouTubeブランドコネクトとは
YouTubeブランドコネクトは、以前「FameBit」という名前で知られていたサービスで、2016年にAlphabet(YouTubeとGoogleの親会社)によって買収、2020年代初頭にブランド変更と再構築が行われました。
これは、クリエイター(YouTuber)とブランド・企業をつなぎ、ブランドコンテンツ動画を制作するための公式マッチングプラットフォームです。
近年のインフルエンサーマーケティングでは、多くのインフルエンサーやクリエイターが、ブランドと直接契約を結んでいます。広告が主な収益となっていたGoogleにとって、自社のプラットフォーム内でブランドとクリエイターのマッチングから効果測定までを完結させるサービスを開発したのは、ごく自然な流れと言えるでしょう。
YouTubeブランドコネクトの主な特徴とメリット
このプラットフォームを利用することで、ブランドは自社の製品やサービスに合ったクリエイターを簡単に見つけることができ、またクリエイターは制作したコンテンツを通じて収益を得ることができます。
ブランドのメリット
- 自社に最適なクリエイターの検索と選定
インフルエンサーマーケティングのキャンペーン概要を登録すると、ブランドの目標やターゲットオーディエンスに合致するクリエイターを推薦してくれます。これにより、マーケティング担当者は従来よりも迅速に精度が高く、ROIの高いクリエイターを見つけ出すことが可能になります。 - プラットフォーム上でのキャンペーン管理
クリエイターとの交渉やコンテンツのブリーフィング、動画のプレビューなどをプラットフォーム上で一元管理できます。
またGoogle広告と連携でき、クリエイターによって動画コンテンツが制作された後、パートナーシップ広告(第三者配信)として広告配信もできます。
- 強力な効果測定とインサイト
視聴回数やエンゲージメント率の成果がわかるだけでなく、Google広告と連携することで、クリエイター投稿の動画から発生した推定コンバージョン数まで追跡できます。さらに、キャンペーン前後のGoogle検索推移を図れるサーチリフト調査や、広告接触者/非接触者による認知計測が可能なブランドリフト調査もあわせて行えます。
クリエイターのメリット
- 新たな収益機会
自身のチャンネルに合ったブランドからの案件オファーを受け取ることができます。広告収益やスーパーチャット、メンバーシップなどに続く、新たな収益を得ることができます。
- メディアキットの自動生成
YouTube Studio上で、自身の「メディアキット」が自動で作成され、簡単に編集や管理が可能となります。メディアキットには、自身のチャンネルの基本情報、視聴者のデモグラや興味関心といったオーディエンスデータなどが視覚的にわかりやすいレポート形式で表示されます。
現時点での利用可能国と利用条件
利用対象国:現在ベータ版が利用できる国は下記です。
- アメリカ
- イギリス
- ブラジル
- インド
- インドネシア
利用資格:クリエイターがYouTubeブランドコネクトを利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 18歳以上
- YouTubeパートナープログラムに参加している
- チャンネル登録者数が25,000人以上(招待制)
- 対象国内に拠点を置いていること
- コミュニティガイドラインの違反や警告がないこと
現時点ではベータ版であり、クリエイターは招待制となっています。またブランド側も、Google広告アカウント内にブランドコネクトが表示されている場合が対象となります。
YouTubeブランドコネクトの利用方法
ここでは主にブランド側の利用方法を紹介します。
※2025年8月現在のベータ版情報。今後変更される可能性もあります。
①キャンペーン作成
ブランドはGoogle広告からYouTubeブランドコネクトのダッシュボードにアクセス。キャンペーンの目標、予算、動画形式(長尺/ショート動画など)などを設定します。
②クリエイター検索
条件に合うクリエイターを検索します。トピック、ユーザー属性、クリエイターの言語を選択して必要な情報を指定すると、クリエイターリストが生成されます。必要に応じてチャンネル登録者数などの条件を追加できます。
③オファー
リストからクリエイターに対してオファーを送ります。オファーには、キャンペーン概要、提供される商品やサービス、報酬額などが含まれます。一度に送信できるオファーは30件までです。
④交渉と契約
オファーを受け取ったクリエイターが「関心あり」の場合、ブランドと直接支払い条件や契約について交渉します。
- 報酬額について:過去の価格分析やリーチ回数、視聴回数の見積もりなど、さまざまなシグナルに基づいて自動で提案価格が計算されます。この価格はGoogleからの提案であり、そこから編集して報酬額を提示することもできます。
- 契約について:契約はプラットフォーム外で行うよう記載されています。おそらく、メールなどで契約書やNDA締結、動画構成案のやり取りなどを行う必要がありそうです。
⑤クリエイターの動画を確認する
動画制作が完了したら限定公開でアップされるため、確認し問題がなければ承認、動画が公開されます。修正がある場合はコメント入力も可能です。
⑥支払い
支払いはブランドからクリエイターへ直接行います。
インフルエンサーマーケティングをデータで証明する本当の効果
YouTubeブランドコネクトの最大の強みは、YouTubeの膨大なデータを活用した詳細な効果測定にあります。それではどのようなデータが取得できるのでしょうか。
取得可能なデータやブランド効果測定
動画のレポート
公開された動画のレポートには、以下のような内容が表示されます。
- 動画のサムネイル
- 動画のタイトル
- チャンネル名
- 動画が掲載された期間
- 視聴回数:視聴回数の合計が表示されます。
- オーガニックエンゲージメント率:動画に反応(高評価またはコメント)した視聴者の割合。
- 高評価数
- コメント数
- 高評価と低評価の比率
以下はベータ版の指標です。ベータ版の指標を利用するには、Google広告のコンバージョントラッキングのセットアップ、支払い情報の設定が必要です。
- オーガニック推定コンバージョン数:
動画の承認日または公開日以降、動画のオーガニックビューから発生したコンバージョン数の概算です。
- オーガニック推定コンバージョン率:
オーガニック推定コンバージョンにつながった割合の平均を示します。
- オーガニック推定ユニーク視聴者数:
動画の承認日または公開日から30日以内に YouTubeで動画をオーガニック視聴したと推定されるユーザーの数です。クロスデバイスの統計モデルが活用されており、一人のユーザーが異なるデバイスで同じ動画を複数回見るケースや、複数のユーザーが同じデバイスを共有しているケースのデータを調節して、動画の総リーチを測定できます。
- ユーザー属性:
オーガニックにリーチしたユニークユーザーのデモグラ情報(性別・年代)が表示されます。
ブランド認知の効果測定
オファーを作成する際、サーチリフト調査・ブランドリフト調査を設定することもできます。サーチリフト調査・ブランドリフト調査とは、広告想起やブランド認知度といったYouTube広告効果を計測するための調査です。
サーチリフトは、YouTube広告の配信前後期間で特定キーワード語句の検索量を比較するものです。ブランドリフトは、YouTube広告に接触した層と接触しなかった層で、ブランドに対する反応の違いをアンケートで調査する手法となります。
YouTubeタイアップが簡単にROI証明ができるようになる
YouTubeブランドコネクトの最大の魅力はその効果測定にあると思います。その理由は、大きく2つあります。
1. 従来のインフルエンサーマーケティングにおける「ROIの証明の難しさ」
これまで、企業のマーケティング担当者がインフルエンサー施策について証明をしようとする際、以下のような課題が常にありました。
リーチや再生数、いいね数・コメント数といったエンゲージメント指標は分かるものの、それが具体的にどれだけ「ブランド認知度の向上」や「購入意欲の促進」に繋がったのかを証明するのが非常に困難です。
施策の前後でサイトセッション数や売上が伸びたとしても、それが本当にそのインフルエンサーの動画によるものなのか、他の広告や季節要因と切り分けることが難しく、明確な因果関係を示せませんでした。
2. YouTubeブランドコネクトが提供する「Googleならではの解決策」
YouTubeブランドコネクトは、この課題に対して、GoogleやYouTubeが持つデータを活用して簡単にROIを計測できる解決策を提示しています。
- オーガニック推定コンバージョン数
動画のオーガニックビューから発生したコンバージョン数の概算。つまりこれまでは、広告配信をするか、概要欄に設置したリンククリックからでしか計測できなかったものが、Google検索や別サイトからのリファーラルなど計測範囲が広がることを意味します。
- ブランドリフト調査やサーチリフト調査
現在もこの機能を利用するには特定の条件があるため全ユーザーに開放されるかは不明ですが、それでもクリエイターとのタイアップ広告も調査対象にできることは大きな進化です。
このように、インフルエンサーマーケティングを「なんとなく効果がありそう」という曖昧なものから、「データに基づいて簡単に効果証明できる」広告手法へと進化させるものとなります。
マーケティング担当者にとっては、施策の価値を明確に示し、より大きな予算を獲得して戦略を拡大していくための強力な武器となるため、その効果測定機能が最大の魅力として話題にあがると思われます。
ベータ版に参加しているクリエイターの反応
それではすでにベータ版が公開されている米国や英国の評価はどのようなものでしょうか。以下、Redditに投稿されていたクチコミをまとめました。
現時点では案件数の少なさから「期待外れ」の声が多い
- 実際に案件のオファーが来たという報告は非常に少ない
- メディアキットが自動で作成される
- 詐欺案件やスパムメールから開放される
多くのクリエイターがYouTubeブランドコネクトに登録したものの、実際に案件のオファーが来たという報告は非常に少ないのが現状です。特にチャンネル登録者が数万人規模であっても、「登録してから何も起きていない」という報告が大多数でした。
まだ参加しているブランド側の企業数も少ない可能性があるため、現時点ではこういった評価が多いのかもしれません。
MCNや事務所所属のクリエイターはどうなる?
MCN(マルチチャンネルネットワーク)に加入しているクリエイターや、事務所に所属するクリエイターもYouTubeブランドコネクトを利用することは可能です。
現時点で明確な記載はありませんが、他のYouTubeパートナープログラムと同様、MCNが窓口となって利用規約への同意や契約、案件進行を実施できると思われます。
MCNを持たない事務所の場合も、クリエイターのYouTubeアカウントに承認済みユーザーとして追加することで代理することが可能です。
しかし、ブランド側にデータに基づいた報酬額が提示されるようになるため、キャスティング費用の平準化やクリエイター間の競争が激しくなる可能性もあります。
日本は対象となる?ローンチの可能性と各所への影響
日本でローンチされる可能性について
では、YouTubeブランドコネクトは日本でローンチされるのでしょうか。現時点では公式アナウンスもなく不明ですが、個人的には日本も対象となる可能性が高いのではないかと予想しています。その背景には、次のようなものがあります。
1. 日本の広告市場とインフルエンサーマーケティング市場の成長
日本は世界でもトップクラスの広告市場です。また、日本のインフルエンサーマーケティング市場は成長を続けており、YouTubeを活動の中心としているクリエイターも非常に多く、さらに消費者の利用SNSでもYouTubeは年代、利用率ともに高い水準を保っています。
2. クリエイターエコノミーの成長とグローバル展開
近年、推し活文化をはじめとしたクリエイターエコノミー市場は世界的に成長を遂げており、中でも日本市場はその約10%を占める規模で、世界的に注目されています。クリエイター向けのサービスを展開する事業者間の連携強化も勢いを増しており、YouTubeもBASEと連携することで、動画内で商品を紹介販売する仕組みを実現し、クリエイターへの収益化を支援しています。
3. すでに入口となる「クリエイターパートナーシップ」がベータ版実装されている
そして最後に、Google広告アカウント上で「クリエイター パートナーシップ」メニューがベータ版で実装されていることです。弊社の自社広告アカウントも対象となっており、多くのGoogle広告アカウントに実装されているのではないかと予想されます。もしGoogle広告アカウントをお持ちであれば、ぜひ確認してみてください。

また弊社アカウントで「動画をリンク」を試してみたところ、記載どおり対象動画のオーガニックデータの取得が可能でした。推定コンバージョンについては表示されておらず、これらの項目はまだ一部のアカウント、もしくは一部の国のみが対象のようです。
また「お客様のブランドのスポンサー コンテンツを作成しているクリエイター」から、自社ブランドに関するコンテンツを制作しているクリエイターの動画が表示されるようですが、現時点ではクリエイターの言語が英語のみの制約があるため、日本ではまだ候補の表示はされない可能性があります。
その他、検出にはクリエイターがYouTubeパートナープログラムに参加していること、パートナーシップシグナルがあることが必要です。

日本ローンチ時に考えられる影響
もし日本でもYouTubeブランドコネクトが利用可能になった場合、国内のインフルエンサーマーケティング市場に大きな変化をもたらすことは確実です。
特に、YouTubeの膨大な視聴データを活用したクリエイター選定や効果測定の精度が、マッチングサービスや検索サービスを提供しているサードパーティ製のツールにとっては大きな脅威となるでしょう。
しかしインフルエンサーマーケティングは、単一のプラットフォームだけではなく、InstagramやX、TikTokといった他のSNSと同時にキャンペーンを行うことも多いプロモーションです。
例えば、YouTube案件と一緒にXへの投稿を行うケースであったり、Twitchといったライブプラットフォームを活用しているクリエイターも多くいます。こういった複数のSNSを活用する場合は、既存のサードパーティ製ツールの方が横断的に管理や分析ができるため、使い勝手もよいでしょう。
広告代理店は不要になるのか
YouTubeブランドコネクトのようなツールや大きなアップデートが公式から発表されると、「広告代理店の役割は終わるのではないか」という議論が度々起こります。
結論から言えば、代理店の役割が完全になくなることはないでしょう。特に、戦略立案やクリエイティブの企画、複雑なキャンペーン全体の進行管理といった領域では、依然として専門的な知見を持つ代理店の価値は残ります。
しかし、「クリエイターをリストアップして紹介する」といった業務が中心の代理店では、その価値が低下する可能性があります。インフルエンサーマーケティングを組み込んだ総合的な解決策を提示したり、クリエイターの魅力をより引き出す企画やクリエイティブディレクションを提供したりすることが、これまで以上に必要となります。
ブランド側も、急速にインフルエンサーマーケティングの内製化に踏み切るとは考えにくく、まずは代理店がブランドコネクトをツールとして活用していくのではないでしょうか。
日本ローンチに備えて、ブランドが今からできること
それではYouTubeブランドコネクトが日本ローンチされるまでにブランド側で行っておいた方が良いことはあるのでしょうか。
調べる限り特別な準備は必要ないと思われますが、Google広告アカウントと活用しているGoogleプロダクトを連携し、データの蓄積ができる環境を整備しておくと良さそうです。
例えば、以下のようなプロダクトです。
- YouTubeアカウント
- Merchant Center
- GA4(Google Analytics 4)などの計測ツール
- Search Console
- Google Play
- Business Profile
- その他CRM, MA, クラウドデータなど
Googleプロダクトはサービス間のデータ連携が簡単にできるうえ、双方のデータを活用して精度が向上するなどメリットが多いことが特徴です。しかし活用するには一定数のデータが必要といった条件がある場合もあります。
よりデータ精度を高くするために、可能な限り連携を行いデータを蓄積しておくことをおすすめします。
まとめ
本記事では、YouTubeブランドコネクトの概要から、日本市場への影響までを解説しました。このツールが、日本のインフルエンサーマーケティングをさらにデータドリブンなものへと進化させる可能性に、大きな期待を寄せています。
まだベータ版のため情報は少ないですが、SNSマーケティング担当の方や広告代理店の方、インフルエンサーツールを提供されている事業者の方は、今のうちからその動向を注視し、活用に向けた準備を考えておくと良いのではないでしょうか。
デジタルマーケティング支援は
THECOOにご相談ください
THECOOは「デジタル×コンテンツの力でブランドの価値を届ける」ことに重きを置いたデジタルマーケティング代理店で、SNSの消費者行動を中心にしたプロモーション施策の立案から実行までご支援します。インフルエンサーマーケティングやSNSマーケティング、広告運用を通じた集客、顧客獲得にお悩みの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
経験豊富な担当者が提案段階から納品、投稿までサポートしますので、長期にわたるキャンペーンやプロジェクトの場合でもご支援が可能です。また、プランニングや効果測定には独自開発のツールを活用し、データのご共有にも対応し、定性、定量の両面からブランドプロモーションの成功をサポートします。
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