2025
-
12
-
04
2025
-
12
-
04

【脱・マス広告】Z世代のコミュニティ志向とSNS規制から見るパーソナライズ重視のマーケティング戦略
INDEX
はじめに
従来のSNS広告では、より多くの人に広告を届けることが最重視されていました。しかし、Z世代は、メインアカウント・サブアカウントの使い分けや、BeReal・Retroといった「親密なコミュニティ」を好む傾向があります。本稿は、Z世代の価値観を分析し、新時代のマーケティング戦略を提示します。
Z世代のSNS利用トレンド:複数アカウントの使い分けと「親密なコミュニティ」志向
まず、現在需要が高いアプリケーションについての紹介や使用方法の比較から、Z世代にどのような傾向があるのかをご紹介します。
・BeReal
BeRealは依然として高い利用率を誇っています。
毎日全員が同じタイミングで通知をもらう点、通知から数分間しか画像を撮ることができない機能がある点、加工が不可能な点から、リアルな自分を見せつつ、友人のリアルな姿も見ることができるアプリケーションです。

上のグラフでは、BeRealのユーザーは他者も自分も素であることに楽しさを感じている人が全体の40%となっています。飾らない自分や友人を飾らなくて良い環境で発信・閲覧することに心地よさを感じるのでしょう。
・Retro

近年、新しい画像投稿アプリとして「Retro」が登場しました。
Retroは、投稿数制限がなく、画像を選択するのみで投稿を行えます。投稿ハードルが低いことで、InstagramやBeRealよりも気軽な投稿が可能なアプリとなっています。
また、公開アカウントにすることができない点が独自性です。アカウントの交換をしなければ、誰の投稿も見ることが出来ません。全員が非公開設定という特徴からは、特定のコミュニティの中で利用されるアプリケーションという印象が強いです。
BeReal、Retroの支持から、近年のユーザーが「親密なコミュニティ」の中にいることに強い需要を感じていると考えられます。しかし、依然としてInstagramやXは多くの人に利用されていることから、不特定多数との関係・友人や近しい人だけの関係の両立を求めていると考えられます。
以下のグラフでは、SNSで「2~3つのアカウントで、人格を明確に使い分けている」と答えたユーザーが最も多く、41%となっていることがわかります。

BeRealやRetroの例を踏まえると、アカウントを使い分けるユーザーの多くは「沢山の知り合いと関係を持っているアカウント」「親密な友人のみのアカウント」で使い分けをしているのことが考えられます。「親しい友達とのコミュニティ」「大勢の知り合いとのコミュニティ」「アーティストのファンコミュニティ」など、自分の所属する「界隈」「コミュニティ」ごとにアカウント分けや利用アプリケーション分けをすることで、コミュニティに合った自分を使い分けているのがZ世代と言えます。
SNS規制とコミュニティ機能がマーケティングに求める「ターゲット限定」アプローチ
コミュニティ所属の支持に対して考えられる要因として、各種SNSの追加機能や規制が挙げられます。
①学校マークをつけられるInstagramの機能「Add School」

2025年8月、アメリカで大学生のアカウントに大学名を追加出来る機能「Add School」が登場しました。本機能では、アメリカの大学生が、学生証等で行う本人確認を通して、所属大学を追加できます。また、同じ大学の学生のアカウントを検索することも出来るため、コミュニティ内で深い関係作りを行えます。
各種SNSではティーン向けメンタルヘルスコンテンツもあり、トラブルに巻き込まれないための制度も作られています。
②教育機関によるSNSの確認機能

いじめなど、安全に関する懸念を学校側がMetaに直接報告しやすくし、迅速に審査を行えるようにすることを目的とし、米国のすべての中学校と高校向けに教育機関パートナーシッププログラムを導入しています。
③厳格な保護拡大

保護者の設定により、ティーンアカウントのコンテンツ制限が可能となっています。来年からは、保護者の設定により、10代の若者が投稿を閲覧したり、コメントを残したり、コメントを受け取ったりできなくなり、新たに制限が増加するなど、親によって10代の子供がインスタグラムで見るものをより細かく管理できるように設計されています。この機能は日本のアカウントでも適用されており、10代のアカウントに大きな影響を与えていると言えます。
①②は現在、米国中心に始められた機能です。米国でのユーザー規制や、大学の独自コミュニティ機能からは、特定のコミュニティに所属することを求めている若者が世界的にも多くいることが伺えます。
また、各SNSが10代のアカウントの安全のために、10代のユーザーに対して不特定多数との関わりを減らす機能を追加しています。現在の状況からは、アカウントの安全性が保たれつつも、不特定多数と関わることが大幅に制限されると言えます。このような規制の積み重ねにより、デジタルネイティブ世代がSNSにおいて特定の人との関わりを一層重視する傾向になるのではないかと考えられます。
これらの傾向から、大衆向けのマーケティングだけでなく、「特定のコミュニティに向けた広告」や「年代・趣味・性別に応じた広告」のような「ターゲットを限定したマーケティング」がより高い効果を発揮する可能性があります。 ユーザーがコミュニティ所属の感覚を求めるようになったことに応じて、企業やブランド側は、マーケティング戦略を練る必要があるのです。
「コミュニティ」が鍵:Z世代に響くインフルエンサーの「親密さ」と「現実性」
次に、Z世代に人気なインフルエンサーの例から、人気な理由についてご紹介します。
・今日のじいじ
グランフルエンサーと呼ばれる、高齢者がインフルエンサーとなる動画です。今まではインフルエンサーとしてあまり目立っていなかったことから、新鮮さが高い人気に繋がりました。
・りおランド🧚♀️🍬
家族系インフルエンサーです。長女のりおちゃんを中心に動画が展開されており、子供らしい無邪気さと、唯一無二の笑いのセンスが人気を博しました。
これらのアカウントでは、1人で動画を考えて投稿することが難しいであろうユーザーが、インフルエンサーとなることで、投稿された動画の「現実味」を表しています。
また、本人が意図的に撮った動画ではなく、笑いを狙っていない自然な行動の投稿の雰囲気が、その効果を大きくしているのではないでしょうか。「親密なコミュニティを見ている」という感覚になることで、ユーザーはリアルな面白さを感じているのです。
・えいしとさなです。
カップルの日常を動画にしつつも、楽しいところだけではなく、トラブルまで多くを投稿し視聴者に見せる姿勢からは、理想だけでは無い、リアルなカップル像を見ることができるインフルエンサーです。
以上のような「家族」「カップル」系のインフルエンサーは、投稿に「憧れ」よりも「身近さ」「親密さ」があらわれていることが共通しています。
コミュニティ所属意識が高まっている現在、インフルエンサーに求める要素は「親密さ」「閉鎖的」「現実的」なものとなっていることが予想されます。「親密なコミュニティ」を覗くことに楽しみを覚えるユーザーが多くいるのです。
「親密さ」と「体験」で共感を呼ぶ:Z世代向けオンライン&オフライン・マーケティング戦略
本稿では、Z世代の指示するアプリやインフルエンサー、各SNSの利用方法・機能や規制を通して「コミュニティ」需要の高まりをご紹介してきました。「コミュニティ」が求められる背景には、飾らない情報発信をユーザーが求めていることが挙げられます。「コミュニティ所属意識」や「飾らない情報発信」を重視した効果的なマーケティング戦略をオンライン・オフラインの観点からご紹介します。
オンライン
・commune:ブランドコミュニティ・コミュニティマーケティング
「commune」は、企業と消費者の意見交換ができる場所を提供することで、消費者の要望や新しい案を企業側に伝えることのできるサービスです。
このようなサービスの使用により、商品について継続的なコミュニケーションを行うことで、商品を通したコミュニティへの所属意識が強まり、長期的な売上向上に繋げることが可能になります。また、消費者の生の声を直接聞くことが出来るため、企業側のサービス向上につながります。
・インフルエンサーのクリエイティブを重視したPR
効果的なPRを行う上では、インフルエンサーの投稿の雰囲気や、インフルエンサー本人に商材が合っていることが欠かせません。商材とインフルエンサーとの相性を考えて起用を考えましょう。また、PR投稿については、起用したインフルエンサーに合った商材の魅力の伝え方があることを理解し、ステルスマーケティング規制や薬機法などは守りつつも企業が投稿に対し言及しすぎることがないようにすることが重要です。
・BeReal広告
BeReal広告では、通常投稿に類似した、思わずクリックしてしまう自然な投稿が広告になっています。広告らしさのない投稿であることで、ユーザーの興味減退を止めることを可能にしています。また、アプリの性質上、InstagramやXよりも閉鎖的なアプリケーションであるため、広告に対し自然な閲覧数増加を可能にします。
・正直レビューのような「飾らない」広告
Berealの利用者による支持からも「飾らない」SNSはユーザーに魅力を感じさせることがわかります。PRの中でもインフルエンサーに正直な使い心地・感想を紹介してもらうことで、ユーザーの強い興味関心を獲得することができるでしょう。
・コミュニティ別広告:データを利用した広告配信
商材のターゲットを明確に定めることで、広告は大きな効果を持ちます。例として、ファミリーマートにおけるリテールメディアを利用したデジタルサイネージ広告は、高い効果を示しました。これは、店舗のカメラや購買データに基づき、その場にいる客層(年齢・性別など)に即して広告内容を出し分けるパーソナライズが可能であったためです。


上のグラフからは、利用案件の77%以上がデジタルサイネージ広告で売上効果があったことがわかります。ユーザーのコミュニティや所属に合わせた広告が、より効果的な販売促進につながると言えます。
リテールメディアを利用したパーソナライズ広告は、店舗でのデジタル広告から、アプリ上のユーザー別広告まで様々な方法があります。オンライン・オフラインにとどまらず、利用者に合わせた情報を提供することが出来るのです。
体験マーケティング
・店頭プロモーション
イベントでの商材体験動画では、説明を中心としたPR動画よりも飾らない、リアルな体験をしてるところを見てもらうことができます。
イベントを開催し、インフルエンサーに参加してもらうことで、商品・イベント双方の認知拡大を期待できます。また、インフルエンサーだけでなく、視聴者にも体験しに来てもらうことで、商材の販売促進、知名度向上につながります。
・イベント自体の拡散を通した商品の認知度向上
商材と合うインフルエンサーの他に、イベント自体のPRを行っているアカウント等にもPRを行ってもらうことで、イベントを通した商品認知度向上にも繋がります。
・PRが可能な商材の増加
家具や食品が商材の場合、商品の特徴から「送れない」「あげられない」ものである可能性があります。しかし、体験型イベントでは、商材をインフルエンサー一人一人に送ったり、渡したりする必要はありません。イベントの開催は、インフルエンサーを活用したマーケティングが可能な商材の拡大に繋がります。
以上のように、体験型の広告では、商材の制限が緩和される他、インフルエンサー自身の体験を広告として扱えることで、説明をメインとしたPRよりも体験を通した視聴者への販売促進を行うことができます。また、商材のジャンルにあったインフルエンサー以外に「体験型イベント」としてのPRを行ってもらうことで、商材のさらなる認知度拡大にも繋がります。
まとめ
Z世代のSNS利用は、「大衆拡散」から「親密なコミュニティと飾らない情報発信」を重視する価値観へと変化しています。彼らはアカウントを使い分け、インフルエンサーにも「身近さ」と「現実味」を求めます。
この傾向とSNS規制強化を受け、今後はターゲットを限定した個別化戦略が極めて重要です。ファンマーケティング、広告らしさを排した正直なレビュー、リアルな体験型マーケティング、そしてデータに基づくパーソナライズが、高いエンゲージメントと信頼性を実現する鍵となります。
現状はコミュニティや属性レベルでのパーソナライズが主流ですが、今後はユーザー一人一人の趣味嗜好に応じた広告配信が目標となります。
デジタルマーケティング支援は
THECOOにご相談ください
THECOOは「デジタル×コンテンツの力でブランドの価値を届ける」ことに重きを置いたデジタルマーケティング代理店で、SNSの消費者行動を中心にしたプロモーション施策の立案から実行までご支援します。インフルエンサーマーケティングやSNSマーケティング、広告運用を通じた集客、顧客獲得にお悩みの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
経験豊富な担当者が提案段階から納品、投稿までサポートしますので、長期にわたるキャンペーンやプロジェクトの場合でもご支援が可能です。また、プランニングや効果測定には独自開発のツールを活用し、データのご共有にも対応し、定性、定量の両面からブランドプロモーションの成功をサポートします。
PREV
NEXT








